2007.12.31
本年も終わりが近づいて来ました。

忘年会や年末のあれこれも一段落し、ようやく落ち着いて仕事に取りかかり始めました。年明けすぐには関西出張が控えているため休暇ムードどころではなく、山のような仕事に追われています。今日はダウンライトとスイッチのモックアップを作るため、事務所の片隅でコンクリートをこねて型枠に流し込む作業をしました。



今年は防音室以外に完成した物件はなく、最終成果という意味ではややさびしい一年になってしまいました。しかし反面では新しいお施主様との出会いがあり、ブログの開設があり、事務所拡張も行われ、今までにない経験の多い一年だったとも言えます。来年は二件の住宅が竣工する予定ですが、これも今年一年の充実の結果だと考えています。

何はともあれ、今年一年支えて頂いた関係者各位、またブログを読んで下さった皆様に心からお礼を申し上げます。来年はさらなる発展を目指して頑張るつもりでおりますので、改めてよろしくお願い致します。

それでは、良い年をお迎え下さい。

2007.12.31
 2007.12.23
今年最後のプレゼンテーションを終えました。



9月29日のブログでもお伝えしたFさんのお宅なのですが、何回かの打ち合わせを経て少しずつ成長を続けています。今回の打ち合わせではようやく、これなら自信を持って提案出来るかな?という案が出来、Fさんご夫妻にも概ねご同意を頂いたので、これからは実現に向けてより詳細な設計を進めて行こうと思っています。



模型写真からも分かる通り仮称F-Houseは中庭型の平屋建物で、単純な長方形平面の中にやはり単純な長方形平面の中庭を、角度をつけて配置したところが特徴です。Fさんは当初から平屋を希望されており、また敷地が広めであるにも関わらず外部的な庭を希望されないとのことだったので、平屋の中庭型住宅というのはかなり早い時点から前提として決まっていました。

中庭に角度をつけた理由は意匠上の面白さも勿論ですが、中庭を含めた邸内を分割してしまわないための工夫でもあります。逆にこのような細長い敷地に中庭を建物全体と同じ角度で配置した場合には、建物の真ん中が中庭で分断され、かつ分断された二つの部分を廊下がつなぐということになり、建物全体の一体感は失われてしまいます。



一方、斜めに中庭を配置した場合には各空間は穏やかに区切られてそれぞれ異なった性格を持つものの、廊下などで切り離されてはいないため、全体で大きな一室空間に近い広がりを持たせることが出来ると考えています。あるいは考え方を変えて、大きな空間にたまたまポンと中庭が置かれたため、つながりはあるがニュアンスの違う空間が中庭の周りに生じた、と言えるかもしれません。



写真ではよく分かりませんが、模型を覗き込んでみると角度の変化は結構ダイナミックです。また、光の入り方や影の出来方も、四角四面の建物とはかなり違ったものになるだろうと考え、現在さらに効果を高める方法を模索しているところです。



このまま順調に進めば、来年の今頃に竣工を迎えることになるはずです。まだまだ本番はこれからなのに来年の話で鬼に笑われるかも知れませんが、今から楽しみでなりません。

2007.12.23
 2007.12.22
仮称S-Houseの敷地では、解体工事が進んでいます。



かつてSさんがお住まいになっていた家ですが、老朽化が激しかったために長らく使われておらず、今回の計画を機に取り壊すことが決まっていました。ご一家にとっては思い出深い家だと思いますが、やむを得ないですね。



鉄道の路線に隣接している以外は特に難しいところもなかったため作業は順調に進み、一週間あまりで更地が出現しました。



まだ私自身直接解体後の敷地を見たわけではないので、次に監理のため関西に行く機会がとても楽しみです。今までは敷地を隅から隅まで自由に歩き回ることが出来なかったので、どうしても建物を想像するのに制約がある感じでした。



確認検査機関からもついに確認が出たとの連絡をもらったので、年明けからは予定通り建築工事に入ることが出来そうです。いよいよ本番というところでしょうか。次回は地鎮祭の様子をお伝えすることになると思います。

2007.12.22
 2007.12.13
冬の八ケ岳を見に行きました。



土砂降りに見舞われた前回と打って変わって、今回は見事な快晴。唐松の林が葉を落としたせいか夏に比べて光がよく通り、実にさわやかな美しさです。



気温も高く、敷地で建物を想像するには最高のコンディションでした。逆に八ケ岳の冬の厳しさを体感するという目的は今ひとつ達成出来ていません。それでも最高気温は4度程度。日影には少しだけ雪が残っています。



ところで、敷地を見て打ち合わせをしたあとは工事関係者の方が建築家の建てた別荘を幾つか案内してくれたのですが、そんな中で久しぶりに印象的な建物を見ました。山本理顕氏設計の「山川山荘」がそれです。



一見地味で単純な寄棟の建物ですが、その裏には極めてラディカルな設計思想が隠されています。なにしろ、建物内部のほとんどが吹きさらしで、窓が入っていません。



つまり建物は単純な長方形のデッキの上に寄棟の屋根をかけただけで、その間には寝室やトイレや浴室と言った住宅の各機能が詰まった箱が散在して屋根を支えています。

問題は、それら各機能が廊下や居間などの内部空間でつながれておらず、全て吹きさらしのデッキでのみ接続されている点です。トイレに行くにも、収納からモノを出すにも「屋外」に出ねばなりません。また、居間という機能が箱に納められていないため、屋根に覆われたデッキだけがこの家の団らんの場ということになります。冬の八ケ岳で、この家に住むことは不可能だと言っていいでしょう。



もちろんこの建物でお施主さんを説得したこともスゴいのですが、それ以上に単純な構成によって光と影の美しさが厳しく純粋に表現されていることに強く感銘を受けました。

思うに、建物にとって開口とは光を建物の内部に届け暗闇に救いをもたらすものなのですが、現実の建物ではそれがガラスやサッシと言う不明朗な存在で仕切られているため、光と闇の相克が本来の力を失っている場合がほとんどです。

逆に我々が古代遺跡を美しいと感じるのは、そこではガラスやサッシといった人間の卑小な実用性が年月によって洗い流され、純粋な光と影だけを目にすることが出来るからだと考えられます。そして山川山荘の力強さは単に大胆なプランニングによるだけではなく、そのようなプランニングに従うことで可能になった不純物のない開口と単純な造形が生じさせたものだと言えるでしょう。家の内部(?)は遺跡のように原初的な光と影のせめぎ合いに満たされ、ただデッキを敷いただけの空間を人間が時間を過ごすのにふさわしい印象的な場所にしています。



この辺りはかなり標高が高いため、道はもはや真っ白に埋められています。



午後遅く、八ケ岳から見た西日を浴びる秩父の山です。空気が乾いているせいか、驚く程遠くまで見通すことが出来ます。



それにしても、この数日は山川山荘の印象が頭を離れません。嫉妬や賞賛、快哉の混じったうめき声を思わず上げてしまったのは、かなり久しぶりのことです。

この建物を直接今回の八ケ岳の山荘の参考にするつもりはありませんが、自分はどういう仕事をすべきなのか考える大きなきっかけにはなりそうです。自分が今まで考えて来たことが間違ってはいないと実例で勇気づけられた反面、まだまだやりたいことを明白な形で示せていないと教えられたような気がしています。

2007.12.13
 2007.12.07
ようやく、ようやく「仮称S-House」の工事契約がSさんと工務店の間で取り交わされました。いよいよ着工ということになります。



とは言うものの、すぐに建物が建ち始めるわけではありません。まずは古い家屋の解体から。解体にしても初めから重機がどんどん入ってというわけにも行かないので、ひとまずは静かなスタートです。



まずは防護のための仮囲いを作るのですが、それに先立ち鬼瓦なんかの重いものは手作業で取外します。電線なんかも外しているようですね。



さらに、庭の植栽なども撤去されます。これらが済んだ上で仮囲いが組まれ、いよいよ重機の登場。解体現場らしくなるのはおそらく来週辺りになるのでしょう。

それにしても、なんとか現場をスタートさせることが出来てホッとしています。

最近新聞や週刊誌でも取り上げられ始めている建築確認厳格化の煽りをまともにくらってなかなか契約を結べる状態に至りませんでしたが、ようやくこれなら確実に確認が通るだろうという方針が立ち、その方針に沿った予算を組むことが出来ました。まだ建築工事に対する確認は出ていないのですが(規模の小さい解体工事は建築確認がなくても行うことが出来る)、それも近々なんとかなりそうです。

年内には確認を取得して、年明けには晴れて地鎮祭、それからいよいよ本格的な建築工事と、しばらくは慌ただしい日が続きそうです。他のプロジェクトもあってなかなか大変ですが、この時期の作業が建物の出来を左右するので、ひとつ奮起して仕事に取り組もうと考えています。

2007.12.07
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