I-MANGO
奈良県橿原市に建つ住宅です。敷地は南側の前面道路と北側の鉄道線路に挟まれており、さらに西側は建主のご両親がお住まいの家と隣接しています。計画を進めるに当たっては、このご両親の家と緊密な関係を築くことが重要視されました。
当初は隣家との物理的な接続も検討されましたが、法規・構造などの面から現実的ではありません。そこで建物を敷地背面に寄せて前面に庭を設けているご両親の家にならい、新しい家も敷地の前面をあけることで両家の庭を一体化し、大きな共有の庭として二つの家をつなぐ紐帯とすることにしました。ただ、共有の庭に対して単純に直面して窓を開けたのでは前面道路からの視線にさらされてしまうため、カーテンや塀などの目隠しが必要となってしまいます。カーテンでは屋内から庭を見ることが出来なくなりますし、塀では日の当たらない影の面を眺めて生活することになり、いずれにせよ折角の大きな屋外空間を生かしながら生活の中に取り込むことが出来ません。
そこで平家の車庫を共有の庭の端部に配置し、その屋根をプライベートな屋上庭園とした上で、この空間に面して居間を配置することにしました。ここであれば前面道路と1階分の高低差があるため歩行者の視線に直面することはなく、カーテンや窓を開けた状態でも居室内が外部から見通せてしまうことがありません。この屋上庭園はスロープを介することで共有の庭と接続されており、隣地との自由な行き来が可能な、両家が共に時間を過ごすための接点としての役割も併せ持っています。