F-WHITE
斜めに配置された中庭が特徴的な、平屋建ての郊外住宅です。敷地は三十年前に分譲された住宅地の一角にありますが、たまたま区画が典型的なサイズに割り切れず、通常より面積が広い割りに間口が狭いため人気がなく、長らく駐車場として利用されていました。建主のご希望は、この場所に一体感のある内部空間を持つ平屋の家を建てたいというものでした。
比較的敷地が広く隣家からの距離があるため、敷地中心の上空には遮蔽物のない美しい空を得る事が出来ます。この空を生かすため、敷地の中央に中庭を設けてプライベートな屋外空間とすることにしました。平屋は建物自身が低いため中庭の採光の妨げとなりにくく、その意味でもこの組み合わせは理に適った選択です。一方で細長い敷地の中心に中庭が配置されるため、中庭自身の存在によって住宅の内部は二つに分断されることになってしまい、「一体感のある内部空間」という要望を満たす事が出来ません。
そこで中庭を斜めに配置し、中庭周囲の空間全てに不整形ながらも居室として必要な広さを持たせてそれぞれを端部でつなぎ、廊下をなくすことにしました。これらは空気のつながったひと続きの空間であり、中庭を共有することで全体として強い結び付きをもっています。また中庭のプライバシーが確保されているためカーテンを閉める必要がなく、特に気候の良い晴天の際は窓を開け放ち、中庭を居室の延長として生活に取り込むことが出来ます。
このような広がりと一体感の一方で、中庭周囲の居室は単純な一室空間ではなく、機能の分化した性格の異なる場所の集まりであると言うことが出来ます。中庭に沿って角を曲がるたびに少しずつ空間の表情は変化し、よりプライバシーの高い奥の領域へとつながって行く・・。平面的には単純ですが、心理的には奥行きが感じられるような深みのある住空間を作りたいと考えました。