House & Café HéssOrganica
岡崎市の見晴らしのよい丘陵に住宅を新築するにあたり、建主ご夫妻は健康な食生活を提案するカフェを兼ねた家を建てたいと考えていました。ご主人が木質材料の研究者であり、奥様はオーガニックな料理に造詣が深いことから、木という素材はお二人にとってシンボリックな意味を持っており、建物の外装には木材を使用することがイメージされていました。
カフェ来客用に駐車場を確保する必要から、建物は建築面積を小さめにして三層構造としましたが、これを「店舗兼用住宅」と考えた場合、アクセスのしやすさから1階を店舗、2・3階を住宅とするのが一般的です。しかしカフェをこのような「路面店」とすると、来客は敷地のもつ景観を十分に楽しむことができない上、奥様がカフェのキッチンで活動されることから、眺めのよい上階は平日のほとんどの時間誰もいない空間となってしまいます。一般的に見ても店舗兼用住宅では「表/奥」や「上層/下層」など店舗と住居を両端に分離させたものが大多数ですが、この住宅においてカフェは建主が発信するライフスタイルの中心であり、これが住まいと分けられることは好ましくありません。カフェと住居は互いを排除するのではなく、中心を共有するものであるべきだと考え、カフェを3層構成の中間、2層目に配置することにしました。これによってカフェとそのキッチンは建物の中央に位置し、それらを取り巻くようにさまざまな生活空間がある家、という同心円状の構成が明確になっています。カフェを中心にして、時に上階の冬の居室に、時に下階の夏の居室に自由に居場所を見つけ、ライフスタイルの発信源から多様な距離感の中で生活を選択して頂きたいと考えました。
その上で来客にとって入りやすい、つまりカフェにアクセスしやすい空間とするため建物を全体に半階分沈め、お店を1.5階相当の高さとすることで前面道路からの高低差を小さくすることにしました。最下層を半地下にしたことで建物は「地上2階地下1階木造」という少し不思議な法的位置づけとなっており、「3階建て」の建物とは見なされていません。これによって防火規制を回避し、3階建てでは難しい木製外装材の外壁への使用が可能となっています。