大きなテラスの小さな家
東京都内の新興住宅地に建つ一戸建ての住宅です。敷地は北向き、かつ3階建ての住宅に囲まれており、日照面からすると決して恵まれた条件とは言えません。一方で建主は「ヨガが出来る日当りの良いテラス」を希望されており、これを実現するため、家並みが途切れて唯一日照のある敷地東半分の2階にテラスを配置して、十分な明るさのある屋外空間をまず確保することにしました。ここに南北方向に大きく貫通するスペースを作ることで風通しの良さと開放感を得ながら、東西方向には壁を設けることで隣家の窓からの視線を遮断しています。
このテラスに屋根をかけ、居間や寝室と行き来の出来るテラス窓で接続することで、この場所を屋外空間として楽しめるだけでなく、屋内空間にとっても採光や通風を得るために有用な緩衝空間とすることが出来ます。この空間は大きければ大きいほどたくさんの青空をつかまえることが出来、日照にも恵まれるのですが、限られた建築面積の中でテラスを大きく確保すると言うことは、その分だけ居室の床面積を奪ってしまうという結果につながりかねません。
そこで1階と2階の間に天井の低い収納階を挿入し、居間や寝室から収納などを減らすことで可能な限り広い居室面積を確保して、屋内空間の減少を補うことにしました。天井高1.4m以下であれば収納階は法規上の階数に含まれず、3階建ての法的制限を超えることなく実質的に建物の床面積を増やすことが出来ます。また、収納階が挿入されたことで2階のテラスと居間の床レベルが半階分押し上げられ、両空間の日照がさらに改善されると同時に、隣家の窓と高低差が生じたことで外部からの視線と干渉の起こりにくい状態が作り出されています。