白い洞窟の家
白く厚みのある外観が特徴的な、金沢市郊外の敷地に建つ中庭式住宅です。
建主のご希望はミニマルで真っ白な意匠と多数の屋外空間、すなわち屋根付き玄関ポーチ、自家用車2台分の屋根付きガレージ、そして中庭を備えた住宅を、というものでした。確かに屋根付きの玄関ポーチやガレージは雪の多い金沢において不可欠なものですが、決められた予算の中でこれらを全て確保した場合、生活するための内部空間が圧迫されることになりかねません。また中庭は雪によって容易に埋没してしまうことが予想されており、降雪地帯の生活に適合させるためには何らかの工夫が必要になります。
これらの問題を解決するため、提案されたのが屋外空間同士をクランクさせながら互いにつないで行くというアイディアです。一つ一つの屋外空間の大きさは抑制しつつ、隣接する屋外空間同士をつなぐことでお互いの機能を補完させ、次につながる空間からは太陽光が差し込むことで奥行きの深さが暗示されて各空間が狭苦しく感じられない、そのような構成が模索されました。
この方針の下ではガレージなどの空間を中庭のようなプライバシーが求められる空間と接続する必要があるため、各屋外空間を立体的にクランクさせることで視線を遮断し、外から内部を見通すことが出来ないようにしています。我々はこの一連の屋外空間を「白い洞窟」と名付け、これを取り巻くように居室空間を配置することで、中庭式住宅特有の静謐な空間に生じる光の変化を生活に取り込んで頂くことにしました。同時に、これら屋外空間のつながりは中庭やテラスに積もった雪を除去するための搬出経路としての役割も持っており、「白い洞窟」は中庭式住宅を降雪地帯で成立させるための実用的な仕組みともなっています。
こうして生じた一連の屋外空間は外界から隔絶されたミニマルな美しさを持っており、これをさらに際立たせるため、中庭の防水層に工夫を加え、浅く水を張って水盤とすることが出来るようにしました。陽光が差し込む白い壁と空の景観に水が導入されたことで光の反射とゆらぎがもたらされ、ミニマルな美意識に囲まれた生活に柔らかな表情の変化が加えられています。