2016.03.21
早稲田大学建築学科、設計演習B/C講師の任期がこの3月で終了となります。長いようで短かった三年間、今年の学生作品のまとめと共に振り返ってみたいと思います。



まずは今年の学生作品紹介から。設計演習については既に何度も取り上げているのでご存知かと思いますが、そうでない方は良かったら以下過去ブログをご覧になってみて下さい。
http://takuroyama.jp/blog/blog201502.htm
http://takuroyama.jp/blog/blog201407.htm
http://takuroyama.jp/blog/blog201402.htm

2015年度作品セレクション、最初は課題「他人の作品」から。自分以外の作家性に対してオリジナリティある翻案を求める課題なのですが、下写真はロダンをテーマとした田嶋玲奈さんの造形作品。



なかなか面白い!そしてちゃんと「考える人」に見えますね。しかしながら影絵の手前に並んでいるのは空き缶やペットボトルのフタなど、全くロダンを想像させないものばかり。私自身は福田繁雄の「ランチはヘルメットをかぶって」をベースにした作品かと思ったのですが、本人は知らなかったのだとか。独力で思いついたのであれば大したもの。

続いて夏休み課題「2015年"日常"という宇宙への旅」に提出された米満光平君の作品。タイトルはズバリ「わたしはヨネミツコウヘイです」。



う〜ん。人拓ですね。

肉体という最も日常的な物体が社会という規範から解き放たれたとき、極めて非日常的なショックを巻き起こすことが出来る。なんていうリクツを抜きにしても、非常にインパクトのある作品だと思います。存在感という意味では、今年の設計演習を代表する一点だと言えるでしょう。

個人的にとても好きな作品がこれ、やはり課題「Section Practice」に提出された原田都木子さんのドローイングです。



ものの切断面を描くことで「Section(断面図)」という建築的な概念の面白さを学ぼうと言う課題だったのですが、ここで切断されたのはなんとピカソの絵画。平面という切断面として最も意味のない形態を選んでおきながら、色遣いや断面のわずかな盛り上がりは確かにピカソらしい感じで、見る側も想像力を刺激されずにはいられません。課題の意義を逆手に取ったとても興味深い作品でした。

続いて課題「他人の作品」に対する戸田弘志くんの作品。写真だとちょっと見づらいが分かるかな?将棋の駒が「平社員」「常務」など、会社の役職名になっています。



商品の企画としても通用しそうなこの作品、とてもいいアイディアなのですが、単に駒の名前を変えただけではまだ不十分、もっと投入出来るアイディアがあった筈!講評会では「駒を裏返すと「クビ」「降格」など予想外のアクシデントが発生すると面白い」「たまに優秀な駒が敵側にヘッドハンティングされるなど、会社の競争的要素を盛り込んでみてはどうか」ほか、様々な意見が表明されました。いいアイディアをどうやって思いつくかは指導出来ないのですが(むしろこちらが知りたい)、いいアイディアをもう一段育てる方法については技術や経験からアドバイスすることが出来ます。

以下はシンプルながら意外に考えさせられる作品、山本出題の課題「反自然」に対する鈴木優也君の回答です。



破顔一笑の野口英世、これはもはや解説不要かな?笑いという極めて自然な表情を不自然に見せる紙幣、その存在の作為性を暗黙のうちに指摘した作品です。一種の批評性を帯びているという言い方も出来るかも知れません。

下作品もドローイング、課題「剽窃の論理」に提出された後藤夕希奈さんの作品。セザンヌの絵画「頭蓋骨を前にした青年」を下敷きにしています。



原画では頭蓋骨に向き合っていた青年が青いジャケットを残して消え去り、残された椅子にはもう一つの頭蓋骨が。諦観を感じさせるリメイクですが、原画では厚ぼったく閉ざされていたカーテンが開かれ、不思議なさわやかさが画面に差し込んでいます。画想といい重厚なタッチといい、建築学科の絵のレベルを越えた作品だと思うのですが、如何でしょうか。



他にも面白い作品は沢山あるのですが、どうしてもここでのセレクションは分かりやすく画面映えするものがメインになってしまいます。良かったら是非以下HPからその他の作品もご覧になってみて下さい。なお、写真は課題「無人島のエンターテイナー」に対する藤波怜司ルイス君の作品、色彩と形態が鮮やかに変化するキネティック・スカルプチャーです。
>設計演習B/C 公式ホームページ




さて、最後は出題されることのなかった課題案について。実は今年最後の出題用に考えた課題案があったのですが、諸々の事情により不採用になってしまいました。




タイトルは「設計演習Z」、死ぬ前にやらずにはいられない、というとっておきのアイディアを問う課題です。う〜ん、コイツはやりたかったな・・。以下、出題レジュメです!
>「設計演習Z」

任期最後の年を迎えるに当たって、設計演習究極の課題とは一体何か?を考えていて思いついたのですが、これまでの他の課題同様、当然自分自身に対する問いかけでもあります。学生諸君も自分なら何をやってから死ぬのか、是非考えてみて下さい。ちなみに私には実現させなければ死ねない建物のアイディアが幾つかあります。関心と経済力のある方は是非お問い合わせを!

さてさて、最後と言いつつ長くなってしまいましたが・・。

三年の任期を終えた今、心境は二度目の卒業を迎えたという感じでしょうか。教える側もそれなりに労力の必要な授業でしたが、それ以上に三年間にわたって人前で作品の批評を語る機会を頂けたことは、得難い勉強の場であったと感じています。何度も言っていることですが、学生よりも先生の方が勉強になっているんですよね・・。逆に学生諸君には、是非いつかこの場に戻って来て、設計演習の勉強を完結させて欲しいと考えています。我々の渡したバトンがさらにその次の世代に引き継がれる、その時のことを想像すると未来に少し楽しみが出来たような気がします。

最後に改めて入江先生はじめ講師の皆様方、そのほか関係各位には三年間誠にお世話になりました。狭い業界内、また違った形でお会いする機会があるかと思います。引き続きよろしくお願い致します!

2016.03.21
 2016.03.16
本日、大森の仮称T-HOUSE建て方がありました。木造住宅の柱梁が一気に組み上げられ、建物が姿を現す一日です。最近は準備や作業チェックを若者がやってくれるのでかなり楽になっていますが、それでも独特の緊張感を感じずにはいられません。



思えば私が初めて建て方を経験したのは12年と半年前のこと、場所は軽井沢でした。あの時は緊張したな・・。

作業自体は事前に準備された通り進むため設計事務所の出る幕はないのですが、万が一何らかの不備が発見された場合、大急ぎで対応する必要があります。建て方の日には機材や人員を集中して一気に作業を進めるのですが、逆にこの日に作業が終わらなかった場合、簡単にもう一回と言うわけに行きません。



緊張感の一方で、建て方は工事工程で最も華やかな、祝祭的一日でもあります。大工さんも沢山集まり、どことなく皆テンション高め。



しかしながら、この10年余りの間に建て方の風景も変化しているようです。柱梁のプレカット精度が向上し、かなり細かい部品まで予め準備しておけるようになったおかげで単に工事が早くなっただけでなく、工事技術や手順もかなり以前と変わって来ています。昔はもっとスカスカでグラグラの状態で建て方が終わったものですが、現在はガッチリと床を貼ってしまうところまで一日で済ませてしまうようですね。あのフレームだけの緊張感のある状態がなくなってしまったのはちょっと惜しいかな・・。作業がスムーズに進む分、大工さんもより集中して作業を進めている、そんな感じがしています。



何はともあれ16時半頃には無事作業終了、建物がその姿を現して現場は後半戦に突入することになります。ここからは写真映えする作業が多くなるので、より頻繁に進捗を紹介して行きたいですね。ご期待を!

2016.03.16
 2016.03.13
雑誌「住まいの設計」取材のため、Kさんご自宅(「大きなテラスの小さな家」)にお邪魔しました。残念ながら薄曇りの寒い一日ではありましたが、和やかな雰囲気の中、無事撮影を終了することが出来ました。



当初は二時間程度の撮影予定だったのですが、カメラマンさんが乗り気だったせいもあり1時間半以上予定より時間オーバー。結果的には問題なかったようですが、Kさんにご迷惑になるのではないかと内心ヒヤヒヤしていました。一方で、カメラマンさんが沢山撮りたがって下さるのを目にすると正直とても嬉しいものがあります。



誌面掲載は5月頃発売の三階建て特集になる予定、楽しみですね!詳しいことが決まり次第、またお知らせしようと考えています。

2016.03.13
 2016.03.05
去る3月1日、「住まいの環境デザインアワード2016」の表彰式が開催されました。「大きなテラスの小さな家」が入賞を受賞しています。



上はスタッフの目撃した社交に勤しむ山本の図。こういうのにも少し慣れて来たとはいえ、やはり苦手意識の拭えないジャンルです。頑張ってやっているところのようです。



審査員のお一人、小嶋さんの背中越しに一枚。小嶋さんの服装はいつもスゴいな・・。一体どこで売ってるんでしょうね?お話しするととても落ち着いたケレンのない方なのですが。
ちなみに京都大学軽音楽部の大先輩でもあります。



会場に飾られたプレゼンテーション。内容の説明よりも、インパクトを重視したレイアウトにしています。もう少し大きければ十分説明出来るんだけど。



というわけで、つつがなく表彰式を終えて参りました。

それにしても、このような機会では毎回受賞した喜びよりもグランプリに達しなかった悔しさを再認識させられてしまいます。授賞式の話題はやはりグランプリの谷尻さんらが多くを占めることになるのですが、驚いたのは挨拶の際に谷尻さんが口にしていた、「我々は住宅を既に130軒くらい建てている」という一言。そんなに沢山やってちゃんと手が回っているのかな?という疑問とともに、やはりガンガン仕事をやっていかねばいかんなあという思いを新たにしました。

なお、表彰式で展示されたプレゼンテーションは、新宿のリビングデザインセンターOZONEにて3/24〜4/5の期間展示が行われるそうです。近くにお立ち寄りの際は是非!

2016.03.05
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