2014.02.17
早稲田大学建築学科設計演習B/C2013年度まとめ。一年間の授業を終え、是非作品を紹介したいと思いつつなかなか手が付けられずにいましたが、先週末の大雪のおかげでちょっと時間が出来ました。このチャンスを逃すともう来年度の授業が始まってしまう!その前に大急ぎでダイジェストをお伝えしておきましょう。

まずはそもそも、設計演習について。

建築学科の設計演習と言えば当然建物を設計すると思われるでしょうが、早稲田の演習はちょっと違います。形を通じて他者へメッセージを伝えるためのより抽象的な訓練をする、というのがコンセプトと言っていいかな。単純に言ってしまうと、アートに近い表現を競うことになります。

くどくど説明するよりも、作品を紹介してしまった方が早いでしょう。以下、山本独断と偏見による優秀作品セレクションです。



まずは「光の箱」。数十年に渡って設計演習の最初の出題であり続けている伝統の課題です。私も学生時代にやったものですよ。写真は馬場芳樹くんの作品。

この作品は立方体6面のうち3面が青・緑・オレンジの透明プラ板で構成されており、その中に綿がゆるく詰められています。



3色の面を通過した光は箱の中で混じり合い、綿がつくる柔らかい受光面を様々な色で染め上げます。箱の中を覗くと夕焼けの空を思わせる複雑かつ曖昧なグラデーションが現れ、光の差し込む向きに応じてその色合いは刻々と変わり続けます。

光の状態が変わると表情が変化するというのはいわば建物の醍醐味の一つで、それを見事に実現しているという点でとても建築的な作品だと言えるでしょう。「光の箱」が数十年間不動の第一課題であり続けている理由も、なんとなく想像して頂けるかも知れませんね。

次は不肖山本が出題した課題、「擬音のあるカタチ」に提出された太田紀子さんの作品。黒い板の上に溶解したクレヨンがぶちまけられています。



擬音でいうと「どぅわっ」という感じでしょうか。これはどうやって作ったのかな?と不思議だったのですが、束ねたクレヨンをドライヤーで無理矢理温めて溶かしたそうです。クレヨンって溶けるんか!作者の持つ謎の知識とアイディアが一体となって作られた、非常に印象的な作品でした。



下の写真も「擬音のあるカタチ」から。作者は藤井真彩さん。



まな板と包丁があるとタンタンタン!と小気味のいい切断音が思い浮かびますが、何故かモノを切る筈の包丁が切られている!理不尽さに思わずツッコミを入れたくなるユーモアあふれる作品、こういうのは大好きですね。



どういうわけか「擬音のあるカタチ」の作品の紹介が多くなっているのですが、自分で出題したせいかな?以下は赤澤貴仁くんの作品。



真っ黒に塗られた台にスプーンと指。そしてスプーンの底だけ黒い塗料がぐっとぬぐわれ、金属の肌が露出しています。



あまりにもささやかな擬音ですが、その感触がありありと想像出来ますよね。日常の中からちょっとだけ新しい視点を発見した、とても印象的な作品だと思います。抑制されていながら分かりやすい表現も素晴らしい。

下写真はやはり山本出題の課題「美しい嘘」に対する鈴木登子さんの作品。パッと見は美しいケースに入った単なる色鉛筆なのですが・・



よく見ると、色鉛筆の木軸の色と芯の色が一致していません。我々が持つモノの外見と中身は一致しているだろうという漠然とした思い込みを裏切っている点も面白いのですが、この色鉛筆を使うことで思いもしない事件や作品が生まれてしまう、そんな想像が働く点もこの作品の魅力でしょう。12本の色鉛筆でタイトルは「24色」。スマートです。

山本のお気に入りには何故か造形作品が多いのですが、課題によってはドローイングや映像の提出が求められることもあります。下の絵は高橋先生出題の「塔(重力の物語)」に対する遠田明音さんの作品。小説「蜘蛛の糸」を題材にカンダタと地獄を描いています。地獄の空間表現がとてもユニーク、かつ業苦を受けている筈の人々がなんとなく楽しそうなのが気になる作品です。



映像作品についても触れましょう。このブログでは直接映像の再生が出来ないので、良かったら設計演習のウェブサイトをご覧になってみて下さい。
http://2013ensyu-bc.blogspot.jp/2013/11/1x12a165a.html



この作品は安東先生出題「Filtration」に対して提出されたもので、私の絶賛作品の一つです。見ると一瞬??と思いますが、何度か見返すと実は非常に単純な事柄を撮影していることに気づかされます。分かるかな?

何の変哲ものない出来事に二段階の工夫を施す事で、今まで見た事のない現象と何かが澄み渡る清涼感を与えることに成功したこの作品。製作は前田直哉くんでした。



最後に再び造形(?)作品、私の出題した課題「空気の模型」に対する遠田明音さんの作品です。彼女はFacebookの「いいね!」マークのシールを沢山作って来ました。



そして提出時、教室に並んだ他の学生の作品のそばに貼って行ったんですね。一種のパフォーマンスとも受け取れるこの作品、しかし他の作品全てに積極的に干渉する作品も、教室全体に渡る空間的広がりのある作品も設計演習史上初めてだったんじゃないかな・・。勿論、ネット上に広がるコミュニケーションの空気を批評的に形にしたという点でも非常に優れた着眼だったと思います。

他にも面白い作品は沢山あるのですが、誌面(?)の都合により泣く泣く割愛!良かったら、是非設計演習のオフィシャルウェブサイトをご覧になってみて下さい。オフィシャルサイトではページの右下に月ごとのリンクがあるので、そこから優秀作品一通りを見て頂くことが出来ます。

http://2013ensyu-bc.blogspot.jp

私もかつて熱中した設計演習、現在は講師の立場で大いに楽しませてもらっています。あと二ヶ月もすれば2014年度が開幕すると思うと、今から待ち遠しいですね!今年はどんな「光の箱」が見られるかな?

2014.02.17
 2014.02.04
昨年12月18日のブログでお知らせしたLIXIL DESIGN CONTEST 2013、表彰式が本日開催されました。



当日は気温18度に達した前日から一転、雪もちらつく寒い一日。会場は代官山の「リストランテASO」、作品の発表と表彰が行われました。



山本事務所「白い洞窟の家」の発表、写真を撮ったものの見事にボケボケ。

そして毎回来てから気がつくのですが、表彰式ってのは一人で行くと誰も自分のいいところの写真を撮ってくれないんですね。やはり配下を連れて来るべきだったか・・。ベテランの方の中には、ちゃんとスタッフを連れて来ている方もいらっしゃいました。



下写真は場所を移した表彰式会場にて、全体講評を行う審査員長の内田繁氏。今回「白い洞窟の家」が受賞した審査員特別賞は審査員各自が一つずつ作品を選定されるのですが、我々のものは内田さんに選んで頂いたそうです。

なお、他の審査員は木下庸子さん、西沢立衛さん、LIXIL常務の小田方平さん。木下さんには、以前ダントーのタイルデザインコンテストで選んで頂いたことがあったっけ。「ホラ、あたしってヨーロッパが長かったじゃない?」と言われたのが印象的でした。



表彰状授与は、LIXIL社長おん自らの手で。しかし社長の表彰状読み上げは噛み噛みだったなあ。どういうわけか「建築」という文字が苦手なようで、全部「建設」と読んでおられました。もちろん、弊事務所も「山本卓郎建設設計事務所」と読み上げられています。



表彰式の後は懇親会、金賞を受賞された前田圭介さんや最近活躍の川本まゆみさんらとお話したのですが、あっと言う間に時間が過ぎ去ってしまいました。折角の機会、もっと多くの方々とお話したかったのですが・・。表彰式とは不思議なもので、大体いつも消化不良のまま会場を後にすることになります。なんでだろう?

ともあれ成果を一つ上げることが出来てホッとしていますが、まだまだ上があるなあという思いも拭えない真冬の半日でした。とりあえず、LIXIL関係各位には「また来年も来ます」とハッタリをかましておいたのですが、その結果や如何に!頑張らんとな。

最後になりましたが、お世話になったクライアントのIさん、施工を担当して下さった二宮建設株式会社の皆さん、その他ご助力頂いた方々にお礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。今後とも、改めてよろしくお願い致します。

2014.02.04
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