2014.07.27
ふと気づくともう夏休み。設計演習の授業はとっくに終了していたのですが、しばらくこもり切りで仕事をしていたので時間の流れを忘れていました。後期がやって来る前に、一度学生諸君の作品紹介をやっておきましょう。



早稲田大学建築学科2年生の設計演習について。は以前ご紹介したのでここでは割愛。良かったら昨年のブログをご覧になってみて下さい。授業の解説の他、昨年の作品セレクションが見て頂けます。
http://takuroyama.jp/blog/blog201402.htm

恒例の第一課題「光の箱」、今年面白かったのが中田大智くんの作品。一見するとトレーシングペーパーの箱に爪楊枝のアタマを貼り並べただけの地味なもので、私も最初は正直?と思っていました。



しかしながら、このようなさほど立体的とも思えない作品の中に思いがけず劇的な変化の可能性が含まれていることがあり、その辺りが「光の箱」という課題の魅力だと言えそうです。この作品も同様で、これは是非動画を見て頂きたいですね。以下、設計演習のホームページへのリンクです。
http://2014ensyu-bc.blogspot.jp/search/label/B1

如何でしょうか。強い光の中で箱を動かすことで、平面的に貼付けられただけの爪楊枝のパターンが意外なほど立体的な、そして整然とした影の動きを作り出す様子が見て頂けるのではないかと思います。

次の作品は木村寧生くんの作品、課題名は「ベーコン・レタス・ハムサンドのはさまったサンドイッチ的な」。これだけ聞くとハテ?という感じかも知れません。階層構造の錯誤をテーマにした課題で、その例として「ハムサンドのはさまったサンドイッチ」を挙げたことからついたタイトルです。



国旗というのは他の国旗が全体の一部を担ったり重ね合わされたりして階層構造を作るということが多く(ex.オーストラリア、イギリス)、目のつけどころは悪くありません。しかし、インパクトの強さゆえに逆に階層構造云々はあまり問題ではなくなってしまったような気もするなあ・・。どちらかと言うとポリティカル・ブラックジョークとしてよく出来ていると考えた方がいいかも知れませんね。中には本気で怒ってしまう人もいそうな気がします。

次は松井恒太くんの作品。課題は「transition」でした。山本が個人的に大好きな一品です。



ややチープなタイトルながら、実は25枚ものボードをつなぎ合わせて作った力作です。しかし、どういうことになっているか分かるかな・・?



実はこのドローイング、ボードの端から順番にず〜っとマッキーを塗り続けた。ただそれだけの作品です。

しかしながら、それが不思議にこちらの心に残るのは、おそらくマッキーの書き味という触覚的な記憶がみんなに共通の体験として共有されているからなんでしょうね。新しいうちは黒々と潤沢に供給されていたインクがやがて少しずつかすれるようになり、いずれは乾いた触感だけを残して失われてしまう・・。何のドラマも存在しないマッキーの一生が画像として視覚に残るだけではなく、手触りとして確かに見るものの心に残る、ある意味とてもセンチメンタルな作品のように私は感じています。

もう一つ山本オススメ、課題「しらべもの、きづき、そのカタチ」に対する連卓也くんの作品。



これもパッと見は難しいですね。実はこれ、とある少年漫画の絵を塗りつぶし、コマ割りのコンポジションだけを取り出したものです。

「何か新しいものの見方を見せるために何かを消してしまう」というやり方はあり得る手で、このドローイングはその典型例だと言えるでしょう。ここではマンガのコマ割りの面白さを示すために内容そのものを抹消してしまっているのですが、コマからはみ出たセリフがチラっと見えることなども相まって、不思議にこちらの想像力を呼び覚ましてくれます。落ち着いたコマ割りではどのような会話がなされているのか?だんだん激しくなって来たコマの変化の背後では一体何が起こっているのか?突然の暗転は何を意味しているのか?見る側の想像力の参加を促せるというのは、とても重要な良い作品の要素だと思います。作家ごとの比較なんかをしてみても面白いかも知れませんね。

最後の作品も課題「しらべもの、きづき、そのカタチ」から、杉山祐太郎くんの作品です。



この作品は、ただただ厚手のトレーシングペーパーを火であぶっただけ。しかしながら、厚手のトレーシングペーパーは実は何重もの層から成っていて、層間のわずかな空気に熱が加えられることで非常に複雑な剥離と膨張が発生します。ある意味、普段は隠されて気づかない材料の本質をあぶり出したということになり、なかなか興味深い気づきがあったと言う事が出来るでしょう。



とはいえ、やはり作品としては物足りない・・と思っていたのですが、講評時に用意された写真を見てビックリしました。まるで未知の惑星の表面のような、複雑な地形とテクスチュア!全てのアイディアはそれを伝えるのに適切な媒体というのがあるものですが、この作品は「写真」というメディアを経由することで完成するべきものだったのかも知れません。この辺り、先生ヅラしてしゃべっていますがこちらも学ぶ事ばかりだというのが正直なところです。

面白い作品は他にもまだまだあるのですが、ここでは課題の前提条件を知らない人でもパッと分かりやすいという基準で幾つかの作品を選んでみました。しかしながら、説明なしでも分かって楽しめる作品、むしろ説明が聞きたくなるような作品を作るということは非常に大事なことですよね。自分で書きながら、自分自身の仕事もかくあらねばならないと感じています。

以上、早稲田大学建築学科設計演習Bのレポートでした。それでは後期をお楽しみに!

2014.07.27
 2014.07.10
LIXIL DESIGN CONTEST 2013 の結果が冊子になって送られて来ました。LIXIL eye(旧INAX report、LIXILの広報誌ですね) に載るのかと思っていたのですが、どうも違ったようです。表紙は前田圭介さんの作品、「後山山荘 -聴竹居@鞆の浦-」。



わざわざ冊子を作って掲載してくれるのはスゴいような、LIXIL eyeに載っけてくれるんでいいような。持って来て下さった営業の方に「これって一般の方の目に触れるんですか?」と訊くと、「カタログと同じように資料請求出来ます」とのこと。う〜む、この本を資料請求する人がいるだろうか・・。



というわけで我々にとっての宣伝効果は未知数ですが、何であれ媒体に載るのはめでたい。沢山頂いたので、頑張って活用させて頂こうと思っています。ご希望の方には一部お送りしますので(ホントに)、良かったらご連絡下さい。



なお、山本卓郎建築設計事務所の受賞作は「白い洞窟の家」、審査員特別賞でした。賞が全てではないというものの、やっぱり一番を獲るのはなかなか難しいもんだな・・と改めて実感。もう一歩上を目指して、来年以降も頑張って行きたいと思っています。

2014.07.10
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