2014.03.17
芝浦工業大学設計演習の授業、早いもので今年で三年目!所定の任期を終え、非常勤講師の最終年になりました。卒業の季節を前に、山本も一足早くシバコー学生諸君とお別れです。



課題は昨年と同様、「旧協同会館」と呼ばれる港区内の文化財指定された木造建築物のコンバージョン。ちょっとしたお寺のような外観ですが、実はもともと風俗街の案内所です。かつては色っぽい建物だったのかな・・。詳しくは、2012年11月25日のブログをご覧になってみて下さい。



今年のトピックは、港区の地域の方々向けに公開発表会が開催されたことでしょうか。学外から訪れた50人程のお客さんを前に、事前投票で選ばれた7人の学生が発表を行いました。



一般論として人前で発表するのはいい勉強になるものなのですが、特に不特定多数の方々を前にお話をする機会は学生にとってとても貴重なものです(学生諸君へ:ここ重要、次に人前でマイクを握れる機会がいつか想像してみよ。卒業設計があって、次は自分の結婚式?その後は?)。みんな緊張していますが、頑張って自分の作品をアピールしています。



我々も講評をさせて頂きましたが、やはり初めてお会いする方々に語りかけるのはとても緊張します。まさしく人前で話す技術を学ぶ絶好のチャンス、実のところ授業を通して一番勉強させてもらっているのは先生なのですよ。

さてさて、今年のシバコーデザイン学科3年生は例年に比べて動きが活発で、授業以外にも個人的にエスキスを希望してくる学生が多かったのが印象的でした。自然と作品も意欲的なものが増えることになります。



上写真は電気自動車のカーシェアリング施設へのコンバージョンを提案した村尾くんの作品。

初めは携帯電話の充電を出来る施設というコンセプトだったのですが、「それなら電気自動車のステーションにしたら?電気自動車は排気ガスがないから木造の建物の中に入れるし、意外と相性がいいかもよ」と提案したところ、彼のツボにはまったようです。電気自動車の駐車と充電が出来る設備だけでなく、建物の一部は外皮が外され骨組みのみになっており、光がさしこむ都市の立体的な公園の機能も持ち合わせています。



もう一つ、なかなか面白かったのが安並くんの作品。建物を持ち上げて移動させる「引き屋」の技術を利用して、建物を半階分持ち上げ、半階掘り下げた地下を解放して屋外市場を作ろうという提案です。

建物を丸ごと持ち上げるというアイディアは、きわめてラディカルですが技術的に実は可能であり、着眼はとても興味深いものでした。一方で、それによるメリットをはっきりと打ち出す事が出来なかったのはちょっと残念。半地下を掘る掘り方も、建物のアウトラインとわざとズラして掘るなど、他の建物では得られない空間を得る方法があったんじゃないかな。

安並くんは学校の課題とはまた別に個人的にも色々と活動をしているらしく、綿棒を組み合わせて作ったストラクチュラル・オブジェなんかも見せてくれました。これは是非、こいつを収納するストラクチュラルな箱を開発してもらいたいですね。就職活動をするなら履歴書の文言を悩むより、これを持って乗り込む方がゼッタイ効く筈。



何はともあれ、公開講評会をもって三年度に渡る非常勤講師が全て終了しました。月並みではありますが、ホッとしたと同時にちょっと寂しい気分というのが正直なところです。

思えば二年と半年前、着任当初は早稲田大学との建築文化の違いに戸惑ったものですが、自分のバックグラウンドとは少し違うところでものを考える機会を頂けたのはとても有意義な経験でした。ご一緒させて頂いた先生方、そしてこれから建築界に飛び出す学生諸君とはいつかどこか別の場所で再会したいですね。こちらも成長した姿を見せられるように頑張りたいものです!

春からはまた早稲田大学での設計演習の授業がスタートする予定、卒業を経て、再び入学する気分で新年度を迎えようと思います。何はともあれ、卒業おめでとう!

2014.03.17
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