2008.03.23
仮称S-House、上部木造部分の建て方が行われました。ご覧の通り生憎の天候でしたが、作業は朝から予定通り始められました。



雨の中での危険な高所作業を、大工さんはさほど気にする様子もありません。お互いに声を掛け合いながら、高めのテンションで作業が進みます。よく見ると、工務店の社長さんが自ら木槌を振るって作業に参加しておられます。ちょっと楽しそう・・。



下は、床に並べられた部材の写真です。



部材は全て加工が済んだ状態で運ばれてくるのですが、大工さんが作業用につけた「いろは」と数字の印がついているだけなので、私の目にはどれがどう組み合わされることになるのかさっぱり分かりません。ここは大工さんに全てをお任せして、こちらは邪魔にならないよう隅でおとなしく見学することにします。



することがないので、何度も敷地の周りをグルグル回っています。これは線路の反対側から見た作業中の写真。白い壁が完成した暁には、かなり目立つ建物になりそうです。



午後からは雨も上がり、作業ペースも上がったようです。

個人的には日のあるうちに作業が終わるのかどうか危惧していたのですが、午後5時にはあっさりと完成し、大工さんも片付けを始めました。ここまで実働8時間。建物の形が最も劇的に変化する一日です。



その後は簡単ながら、上棟式も行いました。セレモニーには例によって工務店の会長さんの仕切りが欠かせません。棟上げの無事を神様に感謝し、お神酒を皆で分け合いました。職人さん達は車で帰る都合上お酒は飲めないので我々もおつきあいして舐める程度なのですが、心なしかとてもおいしく感じられます。



翌日は見事に晴れ上がり、青い空のもとで建て方後の作業が始まりました。

建て方直後の建物はまだ床や壁が出来ていないため建物が持つべき実用性はありませんが、その代わりあらゆる方向に光や視線が抜け、想像していなかった景色に出会うことが出来ます。この後工事の進展に伴って建物が成熟していく反面、様々な視線や光と影の可能性が失われて行くことになります。建物を作る上で避ける事の出来ないプロセスなのですが、いつも少し惜しい気がしてしまいます。

2008.03.23
 2008.03.08
仮称S-House、コンクリート打設の朝の現場です。



二月のブログに記したように、コンクリート打ち放しの打設工事には一発勝負の怖さがあります。

コンクリートは一度型に流し込んで固めてしまえば取り返しがつかないので、何らかのミスや見落としがあった場合に後から大きな問題になる可能性が常につきまといます。その上、仕上げとして満足できる美しいコンクリートを打てなければ、わざわざ打ち放しにする意味がありません。にも関わらず、往々にして型枠の中でコンクリートが行き渡らなかったり、逆にコンクリート自身の重さと圧力に耐えかねて型枠が破損したり溢れ出たりする恐れがあり、リスクを乗り越えずには次のステップへ進むことが出来ません。それまでの地道な準備の成果が問われるという意味では、何か試験や試合に似ていると毎回感じます。



やがて職人さん達が集まって来ます。コンクリート打設の際は普段よりはるかに多数の職人さんが参加する上、ほとんどが全く初めてこの現場に参加するため、事前に建物の説明と手順の確認を行います。そうこうするうちにポンプ車とコンクリートミキサー車が到着し、打設が始まります。



一度打設が始まると、途中でやめるわけには行きません。コンクリートが行き渡っていない状態で固まってしまっては、たとえその後でコンクリートを流し込んだとしても、中断前後のコンクリート同士が付着せず、強度や防水性能が損なわれるからです。作業は休憩なしで続けられます。



当日はうららかな早春の暖かさの中で打設が行われたのですが、作業中に周りを見渡す余裕はありません。私自身も、コンクリートが型枠内で詰まってしまうことのないように、竹竿を型枠の中に突き刺してコンクリートを流動させる役目についていました。結構重労働です。



約4時間後、コンクリートが型枠内に行き渡り、打設作業が終了しました。



その後、まだ仕事は終わらず夕方まで作業は続くのですが、一発勝負の時間は終わりました。職人さん達も一息をついて、リラックスしています。

コンクリートが確かに詰まらずに隅々まで行き渡り、美しく仕上がったかどうかは、まだ型枠を外してみるまで分かりません。が、とりあえず打設中にトラブルは発生せず、予定通り作業を終えることは出来ました。今やることは全てやった、という感じで少しホッとしています。

ともあれ、一つの大きな山を越えることは出来ました。しかし、次の山場である木造部分の建て方も早や二週間後に迫っています。打設翌日、筋肉痛とコンクリートのアルカリによる肌荒れがひどかったのですが、準備のため急ぎ東京へ帰りました。

2008.03.08
 2008.03.02
仮称F-Houseの計画案が固まりつつあります。いよいよ基本計画の段階を終え、実施設計がスタートしました。



個人住宅程度の規模のプロジェクトの場合、我が事務所ではだいたい基本設計に6ヶ月、実施設計に6ヶ月、そして施工に6ヶ月程度の時間を掛けるのが標準的なスケジュールと考えています(最近は確認申請が難しくなり、時間が少し余計にかかるようになって来ていますが)。基本設計段階では建物の根本的なアイディアや大体の平面計画を決めるのですが、ここで決まるアイディアが建物の本質的な善し悪しを大きく左右するので、ある意味最も重要な期間であると言えます。F-Houseでは角度がついて振れた中庭というアイディアによって建物の基本的な性格は既に決まっていたのですが、その後さらに検討を進めた結果機能面でも実用に耐える目処が立ったため、次のステップを目指すことになりました。



写真は最新の模型を写したものです。今までは色のついていない白い模型でスタディを行っていたのですが、ここでは初めて彩色のある模型を作ってみました。Fさんご夫妻に対するプレゼンテーションの意味もありますが、材料や仕上げなど、建物細部のイメージを自分自身の中に育てるためにも不可欠なプロセスだと考えています。



敷地では地盤調査も終え、本格的な構造設計もこれからスタート致します。



幸い調査の結果は悪くなく、地盤の改良などに余計なお金をかける必要はなさそうです。そうそういつまでも順調に進んでばかりというわけにも行かないとは思いますが、今のところ滑り出しは上々で、先行きを非常に楽しみにしています。

2008.03.02
 2008.03.01
コンクリート打設を前にして、またしても仮称S-Houseの現場に来ています。二階床の型枠が組まれたため、建物の上に上がれるようになりました。



毎度のことなのですが、現場で初めて二階に上がれるようになる時はいつも興奮します。それまでは模型やCGを通じて想像するだけだった二階からの景色を初めて自分の目で確認し、そこに発生する光と影や人間の営みに思いを馳せます。この日は天気も素晴らしく、至福のひとときを過ごしました。



型枠の上に並べられた白いものは、ダウンライト用の鋳型のダミーです。この後鉄筋屋さんが床の鉄筋を組む工事をするのですが、この鋳型を避けて鉄筋を敷いてもらう必要があるので型枠が出来た段階で取り付けています。ただし、鉄筋工事は長くて重い鉄筋を扱う荒っぽい工程なので、鋳型の破損を防ぐためにとりあえずはダミーを入れ、全ての工程が終了したあとで本物の奇麗な鋳型に交換し、その上でコンクリートの打設を行う予定です。



面白いと思ったのが、型枠を補強するための鉄パイプです。東京では普通丸い鉄パイプ(いわゆる単管)を組んで補強とするのですが、この現場では角パイプが使われています。訊いてみると、関西では普通角パイプを使うのだとか。お雑煮に入れるのは関東が角餅、関西が丸餅ですが、型枠補強用のパイプは逆のようですね。やはり中部地方に両文化圏の境目があるのか、気になるところです。



来週末のコンクリート打設が、S-House工事の最初のハイライトになる予定です。次々回のブログあたりで、経過をお伝えしようと考えていますので、お楽しみに。

2008.03.01
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