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2010.12.29 |
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香港編がまだ終わっていませんが、その前に年末が迫って来てしまいました。香港編の番外とともに、年末のご挨拶をお送りします。
12月15日のブログで取り上げた香港でのランチの席上、私宛に本が一冊届けられるという出来事がありました。上の写真はまさに届けられたところを撮影したもの。まだパックされたままの新品です。
実はこれ、以前から香港の出版社が編集を進めていた住宅の作品集で、弊事務所の作品も二つ取り上げられています。データ提供の代わりに一冊もらう約束だったのですが、たまたま香港に行くことになったので、BODWの会場で待ち合わせて受け渡しをすることにしていました。想像していた以上に大きく立派な本で、ちょっとびっくり。
タイトルは「inSIDE ; outSIDE Residence」、様々な住宅作品を内部と外部という視点からそれぞれ取り上げたコンピレーション作品集です。
面白いのは装丁のアイディアです。表紙の裏表両方から読み進められるようになっていて、それぞれの表紙は上下逆になった「inSIDE」と「outSIDE」というタイトルが印刷されています。
掲載されたのはI-MANGOとF-WHITE、ともにoutSIDEの項に掲載されています。
今年はF-WHITEが海外の書籍やHPにたくさん掲載されたほか、テレビや賞などでも取り上げられ、パブリシティという意味ではかなりの成果が得られた一年でした。この一冊は今年を締めくくるにふさわしい立派なもので、その点では非常に満足しています。
一方で、F-WHITEに続く作品を完成させることが出来なかったという意味では満足出来ず、来年に課題を残した格好になりました。八ヶ岳と金沢、共に進行は続けているものの、完成迄にはまだ少し時間がかかりそうです。
来年はまた心機一転、新しい成果が得られるよう頑張って行きたいものですね。関係者の皆様のお世話になる日々が続くと思いますが、改めてよろしくお願いしたいと思います。来年が弊事務所にとっても皆様にとっても素晴らしい一年となるよう、心からお祈り申し上げます。
それでは、良いお年をお迎え下さい。
2010.12.29 |
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2010.12.20 |
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先日、急な所用で金沢へ行く機会がありました。ちょっとした事件があったのはその車中でのこと。
いつものように昼過ぎの金沢着を目指し、越後湯沢で新幹線からほくほく線に乗り換えたのですが、その際に私の少し前を歩いているソフト帽の男性にどうも見覚えがありました。というより、後ろ姿を見ていてもそれと分かる程キャラが立っています。
たまたまその方とは同じ車両だったので、着席された際にチラッとお顔を盗み見てみました。やっぱり。建築家の難波和彦さんでした。
難波さんはかつて講師として早稲田に教えに来られていて、私も設計製図の授業でお世話になったことがあります。
たまたま難波さんが出題された際の課題に対する作品には自信があったのですが、それをとても適切に評価して頂き、お褒め頂いたということもあって、難波さんに対しては感謝と親しみを感じています。もちろんそれだけでなく、日本の住宅に対する難波さん独特の取り組みにも影響を受け、代表作である「箱の家」シリーズは幾つも見学に通ったものでした。
なお、上の写真はその際に提出した作品です。ミース・ファン・デル・ローエの代表作「バルセロナ・パビリオン」を住宅に改築せよという課題だったのですが、私はプライバシーの確保によって住宅に改築するという方針を打ち出しました。
目をつけたのは、「バルセロナ・パビリオン」の台座です。
「バルセロナ・パビリオン」は人間の胸あたりの高さの台座に乗っており、非常に抽象的で斬新な建物でありながら、セレモニーの場として必要な象徴性と古典的な威厳が与えられています。この高低差を利用し、通行者の目の高さに当たる位置に赤いフェンス状のオブジェを張って目隠しとし、ガラス張りの屋内空間が外から見えづらいようにしています。屋内からみた場合は、フェンスの位置が低い為景色を眺める妨げにはなりません。また、フェンスで台座を囲ってしまっては閉塞感が出るので、サッと斜めに横切るような配置として、平面形を閉じないようにデザインしました。
学生時代の作品の多くは今見ると恥ずかしいものばかりなのですが、この作品は例外的に今みても鑑賞に堪えられるもののように思われます(色使いやオブジェに「ラ・ヴィレット公園」の影響が顕著に表れていますが)。というよりも、今プロの設計者として考えていることが当時の考えとほとんど変わっていないことに驚きを感じずにはいられません。経験や技術に関しては今は当時と比べ物にならないつもりですが、根本的な「自分はどういう建物を作りたいか?」という点に関しては、大きく変化する事なく歩み続けているようです。
金沢への車中では、思い切って難波さんにご挨拶に伺ってみました。さすがに突然のことでびっくりされていたようですが、すぐに「バルセロナ・パビリオン」の時のことかな?と思い出して頂きました。名前を憶えている気がするとも言って頂きましたが、これはひょっとするとリップサービスかも・・。あまり長くお邪魔するのもなんなので、こちらの仕事のパンフレットをお渡しして、さっと引き上げることにしました。
帰京後、改めてご挨拶のメールを書こうと思い、難波さんのHPを拝見していたのですが、なんとブログにご挨拶差し上げた件が取り上げられていました。HP内「神宮前日記」の中の12月11日の項をご覧下さい。
http://www.kai-workshop.com/
なんだかちょっと嬉しいですね。出来れば今度は、仕事について難波さんに取り上げてもらえるように頑張りたいものです。
2010.12.20 |
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2010.12.15 |
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香港編、まだ続きます。今回は表彰式の模様を。
BODWの二日目には入賞者が招待されてのランチ、表彰式、そしてガラ・ディナーが開催されました。上はランチの模様です。
右端の男性は隣の席の方で、気さくに話しかけてこられました。なんだか中学の英語教師みたいな雰囲気のオジさんですが、テーブルのネームカードを見ると「HONG KONG DESIGN CENTRE Victor Lo」とあります。デザインセンターでは何やってるの?(タメ語)と聞くと実は僕、理事長なんだよねと意外な回答。この時点ですぐに事態に気付くべきでしたが、まだあんまりよく分かっていません。
さらに聞くと、理事長はいわばボランティアみたいなもので、本職はバッテリーを作っている会社を経営しているんだ、とのこと。へえ、バッテリーなんて将来有望な分野じゃないですか(ちょっと上から目線)、電気自動車とかそういうのがありますからね(釈迦に説法)、小売りなんかもやっているんですか?(勝手に渋い中小企業の社長と決めつけ)と訊くと、実は香港とその周辺各国で一番のシェアを誇る電池を作っている会社の社長さんでした。下は翌日コンビニで発見した彼の会社の製品。いっぱい売ってました。
大企業の社長さんが理事長を勤めていることからも分かるように、香港デザインセンターにも今回のイベントにも、随所に産業界と政府の強力なバックアップが感じられます。
なんとなく伺えるのは、金融と軽工業の国である香港が、次の一手としてデザインという分野に関心を寄せているらしいということです。おそらく、これまで人件費の安さが競争力の源泉であった軽工業において、デザインという付加価値に新たな戦略を見いだそうとしているのだろう、と感じました。そのためのノウハウ取得や人材確保、ネットワーク作りの場としてBODWは位置づけられているようです。
中国本土と言う広大かつ成長力ある後背地を控えて活気にあふれた香港ですが、社会の成長に伴って産業の体質を変化させなければならないのは日本と変わりありません。ただ、小さい国だからこそ自分たちの生きる道に対するコンセンサスを得る事が容易で、機動的かつ集中的に投資を行うことが出来ている印象を受けました。翻って日本を見ると・・と考えずにはいられません。
夕刻からは表彰式とガラ・ディナーのためのレセプションが始まりました。
会場の一画には受賞作品の一覧展示が。F-WHITEもあります。真ん中のオジさんは北京の建築設計事務所で働くドイツ人のアンドレアス・ベッカーさん。色々と建築談義をしました。
お客の数はだんだん増え、定刻には会場はほぼ満員に。その場で表彰式があり、トロフィーの授受セレモニーが行われました。カメラマンがいっぱいいましたが、自分が授与されている時の写真は後で送ってくれるのだそうです。
セレモニー後は隣接したディナー会場へ。何だコレ、めっちゃデッカイじゃん。この建物、一体どうなってるの?
ディナー会場には、10人掛けのテーブルが52個ならんでました。スピーチや司会進行がはるか向こうでが行われています。
このパーティーで隣の席に座っておられたのが「諏訪田製作所」という爪切りを作っている会社の社長さんで、いいものを作ることに対する熱い情熱をお持ちの方でした。HPは以下。
http://www.suwada.co.jp/
感銘を受けたのがHPに英語版があることで、いいものを徹底的に追求するかわりに、世界を舞台に製品を売るという姿勢を明確にされています。受賞作品はもちろん爪切り、美しく機能的なだけでなく、メインテナンスや修理も引き受けることで非常に長いスパンで愛用してもらえる製品なのだそうです。
この社長さん(小林さんとおっしゃいます)は同時にとてもお顔の広い方で、閉会後に飲みにご一緒させて頂いたところプロダクトデザイナーの喜多俊之さんと出くわしたのですが、実は20年来のお知り合いとかで、喜多さんも加わってグランドハイアットのバーで一緒に飲むというちょっと信じ難い状況になりました。その席での喜多さんのお話はとても面白かったのですが、長くなってしまうので涙を飲んで割愛・・。やはり日本に対する危機感を軸とするお話でした。
この二週間は香港・Ben's Cafeを通してこの話題になることが非常に多く、本当に真剣に考えるべき時期が来ているのだと考えさせられます。危機的な日本の私は、今一体どういう状況にいるのでしょう?
2010.12.15 |
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2010.12.11 |
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12月10日、二週間に渡るBen's Cafeでの展示が終わりました。
おかげさまでつつがなく会期を全うすることが出来、胸をなで下ろしています。
今回の展示は早稲田・高田馬場地域の方々にこんな仕事をしている人間が近くにいるんだと知って頂こうと思って企画したものなのですが、正直どの程度近隣の方々の注目を集めるか、近隣以外のお客さんにどの程度お越しいただけるかについては未知数だと思っていました。
ところが、フタを開けてみると想像以上に地域の皆さんからの反応があり、多くの方々と面識を得ることが出来ました。特にこのカフェは外国の方が集まる場所なのですが、多くの方に関心を持って頂くことが出来たようです。もともと、作品が日本よりも海外で気に入られる傾向があったために、直接外国の方にアピールすると面白いかも知れないと考えていたのですが、思惑は予想以上に当たったようで、彼らのサークルに遊びに来ないかと誘われたり、メールのやりとりをしたりするようになりました。
また、地域の方以外にお招きしたお客さんも沢山いらして下さいました。特に最後の二日は多くの方がお越しいただいて、建築ジャーナル編集長の中村さん、建築ライターの青野さん、建報社の遠藤さんなどメディア関係の方も足をお運び下さいました。遠藤さんは、展示の模様を建報社のブログにも載せて下さっています。
https://www.asahiglassplaza.net/gp-pro/index.html
もちろん、友人各位もたくさん立ち寄ってくれて、最後の二日は掛け持ちばかりでちゃんと応対させて頂く事が難しいほど。個人的には、病気で長らく会う事の出来なかった友人が奥さんと一緒に展示を見に来てくれたのが、とてもうれしい出来事でした。
写真は、閉店後の店内です。間に香港旅行を含んでいたこともあり、本当に本当にスペシャルな二週間でした。
今年は弊事務所にとって設立から5年目にあたっているのですが、不思議な事にこのところは身の回りになんらかの節目を感じる出来事が多く、香港旅行と今回の展示もこの5年間のひとまとめのようなものだと感じています。今回の成功に味を占めて、また5年後にBen's Cafeで同様に個展をやらせて頂こうと思っているので、それまでにお見せ出来る成果を貯める事が出来るよう、改めて頑張ろうと思います。
関係者ならびに足をお運び頂いた皆様や関心を持って頂いた皆様、本当にありがとうございました。
2010.12.11 |
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2010.12.08 |
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DESIGN FOR ASIA AWARD 2010 の表彰式に出席するため、香港に行って参りました。
大学時代には所属研究室が東アジア高密度居住の研究をやっていたこともあり、香港の話は色々と聞いていましたが、実際に行くのは初めて。DFAA2010を包含するイベントであるBUSINESS OF DESIGN WEEK 2010の会期に合わせ、三泊三日+機中一泊の予定で夜の香港に下り立ちました。以降、今回は写真が多すぎるのでテンポよく!
空港に吊ってあったアンリ・ファルマンのレプリカです。好き!脈絡は分かりません。
翌朝、何はともあれBODWの会場を目指します。
受付です。招待状には「VIPパスを発行します」と書いてあったのでVIPの受付に行ったら、あなたはここじゃないと言われました。憮然。
3時間目から登校のようなつもりでぶらぶらと遅刻して行ったら、開会式はとっくに終わって、深澤直人氏のレクチャーが始まっていました。想像をはるかに越えるお客の数にびっくり。深澤氏のレクチャーは見事のひとこと。
広大な展示会場の一画に、DFAA2010の入賞作品が展示されていました。
F-WHITEの展示もありました。プロダクトデザインは実物が展示されていますが、空間デザインは写真が印刷された布がディスプレイされているだけ。ちょっと寂しい・・。
正直なところ、勿体ぶった展示やカンファレンスよりも、香港の街に興味があります。昼食を機にBODW会場を後にしました。昼食はキノコと鶏肉を載っけたビーフン。旅先では、普通の人が普通に食べるものを試すことにしています。おいしい。
建設現場です。こんな高層のオフィスビルがコンクリで建てられる事は日本ではまずありえません。地震がないからか。
トラムがかわいい!一乗車約25円。
業界的には香港で最も有名な建物、サー・ノーマン・フォスター設計「上海香港銀行本店」です。建築家は、香港に行くと必ずお参りします。
吊り橋のようなサスペンション構造によるオフィスビルとして「ハイテック」スタイルを代表するこの建物。実を言うと私の琴線には触れません。「建築とは、構造と設備と皮膜だ」というハイテックスタイルの潔い自己定義は好きなのですが、定義がクリアすぎるせいか実際に出来たものは読み取るべき深みに欠けるものばかり。どうやら、建築とは構造と設備と皮膜だけではないようです。
香港で最も魅せられたものの一つが、竹の足場です。どんなに高い超高層ビルであっても、建造やメインテナンスには昔ながらの竹の足場が使われています。
このように。なんてシュール。
う〜ん、素晴らしいなあ。
竹同士は、プラスチック製のヒモで緊縛されています。でも、結構いい加減で、押してみると意外に動きます。大丈夫なのか?
実は私はクリストの大ファンなのですが(ドイツの国会議事堂を布で覆ってしまったりする人です)、それと同じことがまさか香港では日常的に行われているとは。
詠春拳だ!ブルース・リーがやっていたことで有名です。習いたい!
当然、おのぼりさんもやってしまいます。上はヴィクトリアピークから見下ろした香港市街。
しかし、香港市街以上に印象的だったのがピークの反対側の風景。島の北半分が前述のように開発され尽くしているのに対して、南側はほとんど手つかずの森が広がっています。この極端さは一体なんなのか?
うってかわって九龍半島から見た香港島の夜景。いわゆる100万ドルのアレです。
香港では、しばしば道路の上空に看板が張り出しています。そんな看板を保守・修理する時にはどうするか。こうするようです。どうやって組み立てたの?
日本語は市街の各所で見受けられ、単に観光客対応だけでなく日本への関心の高さを感じさせられることが少なくありません。変な日本語もままあるのですが、これは全くの意味不明。ずとてのぺうくろ?
昨年やはりDFAAを受賞して香港を訪れた義兄の勧めに従い,香港のショッピングモールは注目して見るようにしていました。これはランガウ・ショッピングセンターの吹き抜けを見下ろしたところ。限られた敷地面積に建物を建てているため、日本以上に上階に客を導く方法論が研究されているようです。ちなみに吹き抜けの底で行われていたのはキティちゃんの展覧会。すごい人気でした。
一日ずっと歩き詰めでクタクタ、9時頃には繁華街を後にしてホテルへ帰投しました。
しかし、香港の街はその頃からエンジン全開という感じ、平日にも関わらずすごい数の人出です。面白いのはみんな酔っぱらっていない!もっと普通に食事をしたりショッピングをしている感じですね。日本のように昼と夜でやることが全く違っているのではなく、昼の延長として夜の時間が使われているようです。夜中に照明の下でバスケをしている風景にもなんども巡り会いました。
香港滞在はまだ一日目。最初は単なる観光客の視点ですが、徐々に香港の社会に対する観察へ関心は移り始め、さらには香港から感じる事の出来る日本の姿はどのようなものか、ひいては日本が(あるいは自分が)世界の中で生きて行くにはどうしたらいいか?という問題に関心がシフトして行きます。次回は表彰式の模様ですが、そろそろ香港で持ち帰った問題意識にも触れながら筆を進めたいと考えています。
2010.12.08 |
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