2012.11.29
去る11月24日土曜日、金沢I-HOUSEの建て方が行われました。現場が最もダイナミックに変化する一日です。私も前々日から金沢入りし、準備を万全に整えて当日に臨みました。



7:30 監督さんと共に現場に到着、既に大工さんたちは活動を開始しています。



7:50 レッカーが始動。



8:30 梁など、人力では運べない大物をレッカーが移動させて行きます。青空が広がって来ました。



8:50 作業が順調に進んでいる間の私の仕事は全体のチェックを行う程度で、比較的余裕があります。現場の周囲をブラブラしていると立派なカタツムリに遭遇。道のまん中で殻に閉じこもってしまったので、安全な場所に移動させておきました。



9:00 梁が掛かり始めました。ここから急速に空間が形作られて行きます。



10:00 建主のIさんも10時の休憩の少し前に現場にいらっしゃいました。休憩時間中に建て方の安全の祈願して、建物の四隅にお酒を撒きます。



11:00 雲は多く風は冷たいものの、晴れ間が広がりいい天気になって来ました。

実は休憩の直前にプレカットに間違いのある部分が発見され、早急に対策を講じる必要が発生しました。ここを解決しなければその上の構造を組み立てることが出来ません。こういう時が私の出番です。



上の写真は問題の部分。プレカット屋さんが勘違いして、鉄骨で梁を受けると思って仕口を作っていませんでした。間に合わせの対策では、後日より深刻な問題に発展する可能性があります。簡便で、かつ構造的に適当な代案をその場で作らなければなりません。

構造設計の山田氏に連絡を取ったところ、なんと高知から飛行機に乗る直前でした。メールで現状の写真と対策案を送り、様々な可能性について電話で議論を行います。



幸い、昼過ぎには方針が決定し、山田氏からも了承が得られました。プレカット屋さんに連絡して超特急で新しい材を刻み直してもらい、無事所定の場所に取付けを行うことが出来ました。



15:00 問題も解決し、午後の休憩の時間になりました。ガレージに長く差し込む晩秋の光が印象的です。



16:30 そろそろ日も低くなり始めました。人数がいるのは今日だけなので、出来る限り作業を進めておかねばなりません。屋根に上り、どんどん垂木を掛けて行きます。



16:50 日没直前の屋上風景。完成後はなかなか見られないアングルです。



同時刻、同じく屋上、別の角度から。



17:30 上弦の月が出ています。そろそろ作業終了も間近。

18:00頃、全ての作業を終了し後片付けに入りました。開始から約10時間半、「現場で一番長い半日」でしたがなんとか無事乗り切る事が出来たようです。



それにしてもつい二日前まではこのような状態だったのが、一気に建物の形が出来上がってしまいました。墨俣の一夜城もこんな感じだったのでしょうか。

これまでは建て方を目標に作業を行っていたのですが、これからは防水や開口などより細かい部分での詳細な施工図作成が我々の仕事になって来ます。まだまだ現場はこれからが本番、忙しい日々が続くことになりそうです。

2012.11.29
 2012.11.25
少し旧聞なのですが、非常勤講師の話題。今年も芝浦工大にて設計演習の授業が始まりました。



昨年に引き続き3年生のリノベーションの課題ですが、対象となる建物が木造になり、文化財の保護という観点が新たに加わっています。授業の開始に先立ち、芝浦工大田町キャンパスから徒歩15分、旧恊働会館という建物を訪ねました。



旧恊働会館は1934年に竣工した木造の建築物で、当初は近隣の風俗街のための案内所として使用されていました。今は駅からちょっと外れてマンションが建ち並ぶ一帯ですが、かつては港も近く、置屋なんかが並んでいたみたいですね。

用途の割には意匠の渋い建物で、杉板の地味な外壁の上に控えめな入母屋の屋根が乗っています。玄関に掛かっている唐破風が唯一建物に華やかさを加えているのですが、使われない期間が長かったせいか現在は建物全体がネットで保護されており、立ち入り出来ないようになっています。それにしても、港区にまだこんな建物が残っているとは・・。



建物の構成は一階が案内所で二階はちょっとした演芸場、構造は伝統的な木造ですが二階の柱の数は極端に少なく、小屋はキングポストトラスで組まれていて和洋折衷になっています。外周はほとんど全てが窓になっていて現在の感覚で見ると地震が来たらポッキリ行ってしまいそうな華奢なつくりですが、下手な近代建築よりもずっと開放感があります。現役時代はかなり爽やかな建物だったのかも知れませんね。



現在は港区に管理されており、文化財として修復しつつ何らかの用途に転用する事が計画されているそうです。学生のアイディアも、優秀なものは区に対してプレゼンテーションする機会がもらえるのだとか。



木造建築のリノベーションの為には、軸組に対する理解が欠かせません。7回の授業のうち前半はグループごとにこの建物の軸組模型を作り、構造と空間の両面からこの建物に対する理解を深めることになっています。以下は学生の作った模型が集合したところ。1/30の大きな模型が10セット集まっており、なかなかの迫力です。



さてさて、ここまでは規定の路線なので特に波乱もなく進んでいます。私自身も客員なので、学生と共に主任の先生が決められた方針に従って勉強しているという感じなのですが、後半からは学生各自が提案を持ち寄り、私も自分なりの考え方で学生の提案をエスキスしていくことになります。学生諸君が一体どういった提案を見せてくれるのか、非常に楽しみですね。後半に続きます!

2012.11.25
 2012.11.01
建築ジャーナル11月号が発売されました。特集は「音のある幸せな住空間」。実は表紙の絵を山本が描かせて頂いています。



以前から建築ジャーナルの編集長さんに表紙の絵を描いてみないか?と言われていたのですが、今回は住宅における音響との調和がテーマということで、住宅を作り音楽をやっていた私にやらせてみようということになったようです。

それにしても作品のプレゼンテーションにしばしば絵を描いてはいますが、設定されたテーマがありその趣旨に沿って絵を描くという経験は初めてです。その上音という形にならないものを描く必要があり、大いに頭を悩ませました。

結果的にはピアノが二台デュオ用に向かい合わせに置いてあるイメージが沸き、これがホールならともかく住宅にあったらスケールオーバーした音が鳴りそうで面白いな・・と思ったのが糸口になり、なんとか形にする事が出来ました。



背景となる住宅はオリジナル設計も検討したのですが、多くの読者(専門家向けの雑誌なので、主に建築関係者)に分かる住宅にした方が良かろうとの判断から、L.カーンのエシェリック邸を選ぶことにしました。知名度が高い上ファンも多く、ピアノを向かい合わせで置いた場合の納まりもバッチリです。何よりも暖炉を中心にシンメトリーに近い構成を持っている点が、点対称に置かれたピアノとマッチするだろうと考えました。



ところで10/3のブログでも取り上げましたが、本号には私と構造設計家の山田氏との対談も掲載されています。

内容については、是非「建築ジャーナル」11月号をご覧になって下さい。山田氏と事前に電話でどうしよう〜?と相談した甲斐もあって、それなりに意味のあることを話せたのではないかと思っています。個人的にも、幾つか発見があってとても面白い経験でした。



発売日は11月1日ですが、それよりすこし前には書店に並んでいるようです。良かったら是非手に取ってご覧になってみて下さい。

2012.11.01
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