2007.02.27
ホームページにある「H/Orange」の写真をちょっとだけ追加しました。カメラマンの鈴木さんに追加で撮って頂いたものなどです。

http://www3.ocn.ne.jp/~yamamotj/homepage/horange1.htm



本当はこの風呂の写真なんかをもっと大きく載せたかったのですが、レイアウトの都合で涙を飲みました。仕方ないのでここに載せたいと思います。

2007.02.27
 2007.02.23
「ゲーデル、エッシャー、バッハ」を読みました。結局二ヶ月近くかかってしまいましたが、何とか読了。スゴい本です。



ご存知ない方の為にちょっと解説を。

ダグラス・ホフスタッター著「ゲーデル、エッシャー、バッハ」(以下GEB)とは80年代から90年代に理系を中心に幅広い知的関心を持つ人々の間に衝撃を巻き起こした問題作で、著者はこの著作によって1980年にピューリッツア賞を受賞しています。

ポストモダン的な方法を先取りした不可思議な著述スタイル、圧倒的な知識量、そしてユーモア。時代を代表する一冊であると言っても過言ではないでしょう。

友人の数学者Sによれば「あの頃はネコも杓子もGEBを読んでいた」そうですが、世俗的な環境(工学部機械学科)に身を置いていた僕自身の回りにはそんなヤツはいませんでした。

かろうじてSの家に転がっていた分厚い本を見て、何じゃこりゃと思っていた程度です。今年正月から読み始めたのは、東急文化会館でのエッシャー展に影響されてのことでした。

アマゾンの書評に溢れる書き込みを見れば、多くの人が何か意見を言わずにはいられなかったことがよく分かります。
一方で内容をシンプルに説明することが不可能であることは全ての読者が一様に語るところ。

かろうじて言えるのは、著者が人工知能の研究者であり数学・論理学・音楽・分子生物学・哲学・ソフトウェアに造詣が深く、またグラフィックアートや禅、文学にも並々ならぬ関心を寄せていること、ゲーデルとエッシャー、バッハという全く違った分野の三人の仕事が著者の関心のある一点において奇妙な一致点を見いだすと主張されていること、というところでしょうか。

その一致点とは「自己言及」であり、システムの外からシステムに働きかけるメタシステムの存在、ということになると思います。

それにしても、僕自身もやはり多くの読者と同様、この大著を分かりやすい言葉で把握し人に伝えたいという過ちを犯しているようですね。書いていて、だんだん気付いて来ました。

もはや引き返せないので続けます。

本書によれば人工知能というのは完結したプログラムを作ってもダメで、それは単に事前に決められたルールに従って行動しているだけで心を持っているとは言えません。

心があると言えるのは外界との接触を通じて自分自身の考え方や反応を修正し(つまりは学ぶということですが)、自らのシステムに反省と改良を加え続けることが必要になる筈なのですが、そのようにシステムを自発的に変化させるシステムを作ることは可能か?というのが人工知能研究の最大のテーマであるようです。

しかしながら著者はこのような問題を直接解いてみせることはありません。むしろ一見無関係なゲーデル・エッシャー・バッハを取り上げることで人間の様々な知的営みを軽やかに飛び回り、「自己言及」が人類の知、あるいは生命の重要な根幹であることを濃厚に暗示します。

その身軽さはまさに80年代の知のノマド。洒落あり隠喩ありアナグラムあり、音楽を形態模写した文章があるかと思えば論理式がズラリと並ぶといった有様で、結論などという陳腐なものはサラリとかわしてどこ吹く風。
とにかく著者の生み出す華麗な知的多次元空間に酔いしれる以外に手の打ちようがない、というのが正直な感想です。

しかし改めて。

今回はやはり無謀な試みだったようです。垣間みた世界を自分なりに解説したいと思ってしまったのですが、爽やかなほどの大失敗でした。この書評で少しでもこの本に興味を持つ人が現れればいいのですが・・

多くの人同様、最後はとにかく読め!としか言えないのがつらいところです。Sも、スゴいんだよ、いやもうとにかくスゴいんだよ、としか言わんかったし。

建築家としてはこのような思考が建築に応用出来ないか?非常に気になるところではありますが、まあ無駄な試みだろうなと想像しています。

類似の話でフラクタル(自己言及的という意味で)を設計に応用する研究も一時流行ったようですが、全くモノになっていないようです。ちょっと考えればそれが絵空事だと気付きそうなものですが・・。

ちなみに本書は根強い人気に支えられているらしく、版を重ねた挙句最近では出版20周年記念版まで出ているみたいですね。マニアがいるんだろうなあ。書店で見かけたら、ちょっと手に取ってみることをオススメします。

2007.02.23
 2007.02.20
先日、H/Orangeの施主であるMさんご夫妻にホームパーティーに御招き頂きました。

雨上がりに光が差し込む気持ちのいい日曜の午後、メンバーはMさんご夫妻と妹さんと僕との4人。

全員お酒好きです。

昼の三時頃からワインを空けて頂きました。
それにしても昼間から飲むお酒はうまい。



ご夫妻は家が完成した後何度かお友達を招いてホームパーティーをされているそうで、お客さん方が家に対してどのように反応されたかについて教えて頂きました。

中でも子供達の反応はとても興味深いですね。小さい子は気持ちいい場所や楽しい場所に敏感で、しかもこちらの想定していない視点からものを見ているので面白い動きをするようです。

H/Orangeの居間の窓際には部屋を囲んで座れるように大きなベンチを作り付けているのですが、子供はそれにつかまって外の風景をジイッとみるのだとか。丁度山手線に乗った子供が椅子の上に立て膝で座って窓の外を見ているような感じでしょうか。

大人は想像した通り、室内側に座って談笑の輪を作ってくれるのですが・・。



ごちそうもお酒もたっぷり頂き(河豚は旨かった・・)、あっという間に日もくれてしまいましたが話題は尽きず。結局夜の12時前までお邪魔してしまいました。

本当に長居してしまって申し訳ありません。翌日のお仕事の支障になっていなければいいのですが・・。

それにしても、家を楽しんでお使い頂いているお施主様の姿を見ることが出来るのは建築家冥利につきるという感じですね。
正直なところ、トラブルを起こさずに仕事を終えることが出来て心からほっとしています。

今後ともアフターケアに努めようと思いますので、よろしくお願い致します。

2007.02.20
 2007.02.13
Blog始めました。

自分の事務所を設立してから、早いものでもう1年半になります。お陰さまでなんとか住宅の仕事を一つ終え、その後新しい仕事を得ることも出来、どうにか軌道らしきものに乗り始めたようです。

しかしながらまだまだ一人前とは言いがたい若い事務所のこと、一体今後どうなって行くのか?全く想像もつきません。
順調に仕事を増やして成長するのか、はたまた仕事がなくなり看板を下ろさなければならなくなるのか。おそらく、日々その分岐点あたりでウロウロしているのが今の自分と我が事務所の姿なのだろうと思っています。

そんななか、少し仕事に対する取り組み方を変えていく必要があるなあと思い始めています。

つまりは社会との関係を成熟させる、ということになるでしょうか。

人間がそうであるように、事務所も成長するにつれて社会との関係が変化していく筈だと思っています。
最初は若さにまかせて突っ走って、周りがそれを受け入れてくれたとしてもそれだけで何十年も仕事を続けることはおそらく不可能でしょう。
だんだんと仕事の数と規模を増やし、人を雇うようになっていく為には社会の信用を得ることが必要になってくるでしょうし、逆に社会的な体裁を作り上げて行くことで事務所も成長するのではないかと感じています。

このBlogはそういう事務所成長の為の具体的な一歩として、社会に対する我々の立場をお伝えしていくために立ち上げたものです。

内容的には堅苦しくなく行きたいと思っていますが、時には建物にまつわる難しい問題も取り上げて、私の考え方や建物の設計プロセスをより多くの方々にお伝えして行くことが出来たらいいなと考えています。

そして結果的に、山本事務所が実際に成長していく物語をお見せすることが出来たら素晴らしいですね。読者の皆さんに楽しんで頂けるように頑張ろうと思いますので、良かったらご愛読下さい。

今回は初めてのアップなので、数回分の出来事をまとめて掲載しました。
出来れば今後は、週に一回くらいのペースを維持出来たらいいな・・と考えています。

2007.02.13
 2007.02.09
噂のGoogle Earthを試してみました。

すごいですね。

先日レバーハンドルの取材で施主のMさんにお会いし、お茶をご一緒した時のこと。例によって飛行機の話で盛り上がり、今年は空から富士山を見ても雪が少ないとか延々やっていたのですが、ふとGoogle Earthの話題になりました。Mさん曰く

「Google Earthで見るとここ(H/Orange)はまだ空き地のままなんですよ」

へえ、そんな細かいところまで見えるんですか。
それはひょっとして、建築家としてはプレゼンにかなり使えるんじゃないですか?というわけで、早速試してみました。

ダウンロードして起動すると。

出ますね。地球が。

バックには、星まである。そして、よく見るとオリオン座が。まさか、季節ごとに位置が変わっているなんていうことは・・・。
まあ、深くは考えるまい。まずはH/Orangeの敷地を訪ねてみましょう。


真ん中の空き地(のうち西側半分)が、現在H/Orangeが建っている場所です。確かに何もないですね。お隣のお宅も建っていないので、数年前の写真のようです。

う〜ん、それにしても想像以上に細かい。これはかなり役に立ちそうですね。
単にプレゼンテーション用の絵が一枚増やせるだけでなく、敷地周辺の環境を俯瞰して見ることが出来ると言うのは、今までにないアドバンテージだと言えるでしょう。
敷地周辺模型の精度はかなり上げることが出来そうです。これはいい。

当然、調子に乗らずにはいられますまい。いろんな所をどんどん訪ねました。

かつてアトリエ・ワンで設計監理を担当したいくつかの作品は、残念ながらまだ載っていなかったり画像が出来ていなかったり。
東京はほぼ完璧のようですが、地方はまだまだデータが揃っていないようですね。現在奈良県で進行中のプロジェクト(仮称S邸)の敷地も、まだでした。残念。

それにしても、移動するときのあの魔法の絨毯のような疑似感覚はスゴい。次の目的地を入力すると、まるで現在地上空から飛び立つように画像がググッと小さくなって、眼下には日本列島が。しばらく宇宙空間を平行移動して、目的地を見つけると再びワーッとクローズアップへ。まさに大気圏突入です。敏感な人なら酔ってしまうかも知れません。

しかしながら。

建築をやっている人間にとって、自分の仕事を上から眺めているくらいで満足出来る筈がありましょうや。当然、次は「世界のあの建物」ということになります。

まあ、やはり「あの建物」の代表と言えばあれでしょうね。

サヴォワ邸。

ご存知ない方は、是非ネットで調べて見て下さい。フランスの国宝みたいな建物で、二十世紀の金字塔と言われている住宅です。そして僕は設計者ル・コルビュジェのマニア。

マニアなので、サヴォワ邸の住所を知っています。日本とは順番が逆だけど、いいのかな?ダメでもともと。入力!

動いた!絶叫!すげえ!本当にパリへ飛ぶ気か?



そして到着。

サヴォワ邸だよ・・・。久しく味わっていない、この血の逆流するような興奮。まさか本当にサヴォワ邸を発見出来るとは・・。

良かったら是非皆さんも体験して見て下さい。座標打ち込みでも行けますが、住所の方がなんとなく衝撃的です。

82, rue de Villiers, 78300, Poissy, France

その後、世界中色々行きました。おかげで、この日はあんまり仕事をしてません。

それにしても、意外に観光名所でないところを訪ねるほうが楽しいですね。例えばピラミッドとかパルテノンに行くと、クローズアップになる前に観光地を示すマークが沢山現れてしまって、なんとなくシラケてしまいます。

そういう意味では観光的には有名でない近代建築なんかを「発見」するのが一番面白いのではないかと思います。ペンシルヴァニアの山奥でフランク・ロイド・ライトの「落水荘」なんかを発見してしまったら、興奮のあまり失神してしまうかも知れません。

スゴいものを発見した方は、是非情報を教えて下さい。

2007.02.09
 2007.02.07
本日、住宅情報誌「都心に住む」の取材でH/Orange玄関扉のレバーハンドルの撮影をして来ました。



ライターのIさんからお話を頂いたのは、つい二日前。

「都心に住む」の新刊号で住宅に備えたいちょっと気の効いたモノを特集するそうなのですが、予定していた品目のうち一つがキャンセルになってしまい、急遽代わりを探しているとか。以前H/Orangeを掲載して頂いた時の縁で、再びお話が回って来たようです。

問題は時間。急な変更なので、撮影の予定はもう決まってしまっているとか。すぐに撮影が可能で、建築家の立場でオススメする気のきいたモノとは?

少し考えて、レバーハンドルはどうでしょう、と提案したところ採用になりました。

このレバ−ハンドルは正直かなり気に入っています。d-lineというデンマークのものなのですが、シンプルで堅牢でありながら、ちょっとだけ余計な曲線がついているところがいいですね。設計では当然既製品を購入して使う部分も多いのですが、我々は建物全体で何かを訴えようとするので、むしろ個別の部分はシンプルで控え目にしたいと思い勝ちです。

ただ、そればかりやっていて無個性で面白くない家が出来てしまうのも困りもので、個別のモノにどこまで主張させるかというのは、意外に難しい問題なのです。このレバーハンドルは、その点シンプルさと遊び心のさじ加減が丁度いい具合に思われます。

と言ったような理由は決してウソではありませんが、実を言うと今回に関しては玄関の外にハンドルがついているというところがミソです。つまり、お施主さんがご不在であっても、いざとなれば外から撮影してしまえるので。

結局、この日は施主のMさんがご在宅だったので、ドアを開けた状態でも撮影することが出来ました。撮影自体は簡単で、30分もかからずにすぐ終了。関係各位、どうもありがとうございました。

それにしても、建築家というのはいつなんどき思いもかけぬ質問を投げ掛けられるか分からないものだな・・と実感しました。今回は緊急事態ということで楽でしたが、逆に時間をたっぷり頂いていたら迷っていたかも知れません。常に自分の考え方と意見を整理しておく必要がありそうです。

2007.02.07
 2007.02.06
友人の建築家Hに誘われて、早稲田大学の公開懇親会「渡邊洋治とその作品」を見に行って来ました。

渡邊洋治はあまり一般に有名な建築家ではないので、ご存知ない方も多いかと思います。

旧海軍勤務後実務を通して建築を勉強し、早稲田の吉阪教授の助手を務めるかたわら設計活動を行っていた人物で、異形の建築を生み出した作家として早稲田を中心にいまだに影響力を持ち続けています。代表作は新宿職安通り沿いに今も建ち続ける「第三スカイビル」、通称は「軍艦ビル」です。



あれか!と思い当たった方もおられるのでは。

銀色の肌と異様な緊張感を持つ艦橋のような外見は正に軍艦。

その異様さからボヘミアン系の外人さん達に大人気で、中には様々な国の人々が暮らしています。一度ミッドナイトパーティーに行ったことがありますが、アングラな雰囲気が実に魅力的。建築は人を集める力があるのだと改めて痛感させられた記憶があります。

渡邊氏はアクの強い個性ゆえ実作は少なかったようで、作品集などではドローイングがほとんどを占めています。

一方で現実の時間の経過にさらされないそれらドローイングの迫力は圧倒的で、学生時代には我々も図書館でそれらを眺めてはその密度に驚嘆したものです。今回は図面の実物が展示されるということで、強力な伯父さんの遺品を見に行くようなつもりで出掛けました。



作品の全貌をお伝え出来ないのが全くもって残念です。

ドローイングはトレーシングペーパーにペン入れされたあと、マジック(!)で墨入れされ、あらゆる余白が塗りつぶされています。作品集では気付かなかったのですが、トレーシングペーパーはインクを吸ってシワシワ。概して図面やドローイングの類いは、現物を見ると意外に密度が低くて大したことがない・・ものですが、渡邊氏の図面に限っては、図面自体が自立したモノとしての迫力を持ち続けているようです。

個人的には建築を評価する基準として、30年以上経ってなお人々に必要とされるものであるか?を重視しているつもりでしたが、一方でどうしても目先の評判や流行に迎合してしまう部分がないでもありません。果たして自分は30年後の後輩が見たくなるような仕事をしているのか?いい時に伯父さんに再会できた気がしています。

2007.02.06
Top