2007.10.31
ここのところ、細かい話題が多いので幾つかまとめて。

その1、奈良県で計画中の仮称「S-House」を施工してもらう工務店がようやく決まりました。

お金に関する調整作業はあらかた済んでいたのですが、確認申請が長引いている影響で工務店の決定が遅れていました。工務店各位には中途半端な状態でお待たせしてしまったのですが、このたびようやく内定となりました。敷地から徒歩5分(!)の場所に本社のある古市工務店さんに工事して頂きます。

この後は11月半ばに工事契約の予定で、出来ればすぐにでも工事に入りたいところです。残る問題は確認で、指定確認検査機関である某日本E社に図面を出してから既に6週間、本当は今日までに構造検討の結果を出すと言っていたのに連絡もナシ。彼ら、忙しいと言っているクセに6時に電話したらもう帰ってるもんなあ・・。新しい確認申請システムについては文句を言いたいと以前にも書きましたが、検査機関の役人根性ぶりにもいつか何か言ってやりたいものです。

その2、H/Orangeの取材について。実は某生活系住宅誌によるH/Orangeの浴室の取材が先週末に予定されていたのですが、お施主様の身辺でご不幸があったために急遽中止になってしまいました。



取材は久しぶりだったので期待していたのですが、残念です。「絵になる」話題でもあったのでブログも一回分書けるなと思っていましたが。

しかしながら、事情が事情なのでやむを得ないですね。Mさんにはいつもとてもよくして頂いているので、わがままを言うわけにも行きません。またの機会に期待したいと思います。

その3、この季節になるとウチの事務所には、必ずカマキリが出没します。今年も天井に一匹貼り付いているのを、先日友人と事務所で軽く飲んでいるときに発見しました。どういうわけか我が事務所はカマキリの産卵に最適な環境らしく、既に通算5回もタマゴを産みつけられています。



上は中庭に面した南窓の窓枠。二つ卵が産みつけられているように見えますが、実はよく見ると窓枠の下にもあります。

今まではそれらの卵は楽しみにしていたにも関わらず孵ることは無かったのですが、今年の春にはついに子供が大量発生。



アリくらいの大きさの生き物がたくさんいるのですが、なんだこれは?と状況を理解するのに10秒程かかりました。片端からつかまえて中庭に逃がしたのがプレゼンの為に奈良に行く当日のこと。何も今日に限って生まれるなよ、と思いながら3時間程を捕獲作業に費やしました。



上の写真は、先日帰って来たコカマキリです。その時はしょうがねえなあとか言って中庭に逃がしてやったのですが、あとでまさかと思って天井を見ると、既に卵が産みつけられていました。



つけっぱなしにしておいた蚊取りにまだやられていなければいいのですが。

なお、その時に一緒に飲んでいた友人というのは早稲田時代の研究室の同僚で、近々所属している某有名建築家の事務所を辞めることになっているのですが、年明けから我が事務所で働いてもらうことになりました。

事務所が新たな一歩を踏み出したようで、正直うれしいですね。仲良く頑張って行きたいと思っています。

2007.10.31
 2007.10.26
このところプレゼンが続いていたためブログで紹介できるような「絵になる」話題がなかったのですが(プレゼン案はまだボツになる可能性があるため)、本日久々の外出で八ケ岳の敷地まで行って来ました。



そして季節は秋。紅葉の敷地で木漏れ日の中を恍惚とする予定だったのですが、無情にも雨。やむなく、土砂降り敷地内を徘徊してきました。

上の写真は敷地外縁部。道路からの目隠しのために植えられたカラマツがうっすらと紅葉しています。紅葉する針葉樹と言うとセコイアあたりくらいかと思っていたのですが、カラマツも紅葉するんですね。別名落葉松とも言うのだとか。長野ではたくさん植えられているらしく、アトリエ・ワン時代には「黒犬荘」の外壁に、工務店さんに薦められてカラマツ材を使った事があります。ソリとヤニがかなりありましたが、野趣のある外壁表現にすることが出来ました。



上は敷地内のシラカバです。シラカバは広葉樹にもかかわらず成長が早いようで、敷地造成の際に植えられた(数十年前?)と思われるものがかなりの大きさに育っています。こいつらはなんとか切らずに残してやりたいですね。



近所に植えられていた楓です。返す返すも悪天候が悔やまれます。天気がよければどれほど美しかったことか。



今回の訪問は役場や敷地の管理事務所との打ち合わせが主な目的だったのですが、勝手ながら少しだけ昼休みの時間を頂いて、近くの美術館へ行って来ました。安藤忠雄設計「小海町高原美術館」です。

しかしながら。

う〜ん、あれほどの名手であるにもかかわらず、不思議に安藤さんの美術館にはいいと思ったものがなかったのですが、今回も正直に言ってあまりよろしくありませんね。内部は撮影が出来なかったのでお見せ出来ないのですが、何故この決め風景であんなものが見えてしまうのか?何故最初に結論が分かってしまうような構成なのか?何故アルミサッシを使っているのか(かつての安藤さんなら絶対に許さなかっただろうものを)?などなど。疑問がちらついて心から楽しむことが出来ません。

天気が良ければここは影がスゴいだろうな、と思われる部分もあったので、多少差し引きして考える必要はありますが・・。敷地からは近いので、また行く機会はありそうです。その際は真の姿を見る事が出来るかも知れません。



なお、たまたま同美術館で開催されていた「ブルーノ・ムナーリ展」は楽しむ事が出来ました。展示点数が少なく、展示の方法にも疑問はあったもののとにかくムナーリの豊かなアイディアが楽しい。

アーティスト・インダストリアルデザイナー・絵本作家と幅広い活動をした人物のようで、彼の手による灰皿は私自身見たことがありました。が、その他の活動については全く知識がなかったため、思いがけない出会いで世界が広がったような気がしています。蝶番で可動する彫刻なんかは、汚い合板を安っぽい蝶番でつないでいるところが実にカッコいい。ただ作りたいから作ったのさ、と言わんばかりです。帰宅後、早速アマゾンで小作品集を注文しました。



残念ながら午後はますます雨がひどくなり、敷地で建物の姿を想像する作業は十分に行う事が出来ませんでした。まあ、雨の敷地を見ておいたのも良かったか・・。次は12月にYさんご一家と冬の敷地を見に来ることになっているので、またの機会に期待することにしたいと思います。

2007.10.26
 2007.10.08
このたび、八ケ岳計画のお施主様であるYさんに、オペラに連れて行って頂きました。ダニエル・バレンボイム指揮、ベルリン国立歌劇場「トリスタンとイゾルデ」です。



さらっと書いていますが、これはちょっとスゴい公演だそうで。

Yさんがご主人と行かれる予定だったところ、ご主人がご都合により難しくなったため代打として声を掛けて頂いたのですが、クラシックファンにとっては垂涎のメンツのようですね。確かに、バレンボイムはクラシックに暗い私でも新聞なんかで何度も名前を見た憶えがあります。せっかくの機会だから予習をしようと思ってこの方面に詳しい友人編集者のNさんに指南を請うたところ、非常にうらやましがられました。



NさんにはCDの他、トマス・マンの「ワーグナーと現代」をお借りし、その他にもワーグナー入門書を購入して今まで知らなかったワーグナーの人物像や音楽史上の位置づけなどを知る事が出来ました。

ワーグナーが19世紀後半の国民国家生成前夜にロマン主義的作風で活躍したことはぼんやりと知っていたので、建築的にはやはり19世紀後半に一世を風靡したゴシック・リバイバルと言われる運動と対応するのだろうと思っていたのですが、観劇後の感想としても大筋その理解で間違っていないだろうと考えています。

このロマン主義・国民国家・ゴシックリバイバルをめぐる19世紀の思潮については持論があるのですが、書き始めると大きく脱線してしまうのでまた改めて。以前友人と話した際に、意外にゴシックとかバロックとかいう様式の違いが一般には知られていないことに気付いたので、いずれその辺りも含めて説明する稿を持ちたいと思っています。



「トリスタンとイゾルデ」自体は5時間の長丁場だったのですが、想像していた程の長さは感じさせず意外な程シンプルな構成でした。

個人的にはやはり舞台美術が気になるところなのですが、これが何とも説明の難しいものでした。上の写真にあるように巨大な天使のうつぶせの半身像が物語の脈絡とは関係なく舞台の中央に置かれているのですが、それが場面によって角度を変えたり回転したりして俳優に舞台を提供します。天使の翼は片方が折れたように地面に崩れ落ち、もう片方が空中を指して羽ばたこうとしており、空間に変化をつけているだけではなく、何らかの寓意を濃厚に匂わせていました。登場人物達が天使の巨大な憂鬱にまとわりつきながらもそれに気付かない様子は、人間の勝手さや矮小さを痛烈に描き出しているかのようで、ちょっと凄みのある演出だったと思います。



上の写真は、休憩中に撮影したオーケストラピットです。公演中の撮影が出来ないので、せめて休み時間にと思って撮影したのですが、やはり係員が飛んで来ましたね。

演奏の巧拙については的確に判断出来ているかどうか分からないのですが、少なくとも久しぶりに聴いたフルオケの音の分厚さは圧巻で、強い印象を受けました。オーディオマニアの方がオーケストラの音の再現に情熱を注ぐのも分かるような気がします。

今回の件に関しては全くもってYさんのご厚意によるもので、貴重な機会を頂けて大変幸運だったと思っています。どうにかして今回の経験を設計に生かし、少しでもいい住宅とホールを提供出来ればと考えています。今後ともよろしくお願い致します。

2007.10.08
 2007.10.03
去る10月1日、大学時代の恩師である古谷誠章先生の建築学会作品賞受賞を祝うパーティーが、東京都庁の展望室で開催されました。私も研究室OBの端くれとして参加させて頂きました。



建築学会作品賞とは。

おそらく、国内では最大の作品賞の一つだと思います。言うなれば、日本におけるアーキテクチャー・オブ・ザ・イヤー。今回受賞の対象となったのは2年前に竣工した「茅野市民館」で、ちょうどコンペに勝利し古谷さんの個展がギャラリー間で開催されたころに私の代は研究室に在籍していたため、展示模型の作成やら何やらで我々もかなり関わりを持った思い入れのあるプロジェクトです。でっかい模型を二つ作ったものだ・・・。



非常に権威のある賞の受賞パーティーなので、お客も多数、そこかしこに有名人がウヨウヨいます。パッと写真を撮っただけで、なんだか見覚えのある人が何人も。

司会の方も、どこかで見た人だと思っていたらNHKの黒田アナウンサーでしたね。違う名字を名乗っていたので、結婚されたようです。



下は、いわゆる鏡開きの光景です。

説明が遅れましたが、右から三番目の人物が今回受賞された古谷先生で、建築家としての設計活動の傍ら早稲田大学に研究室を持ち、その筋では人気研究室としてよく知られています。その他、見事な講評力を発揮しての司会やコンペ審査などの活動でも有名ですね。我々も学生時代は、我々自身が理解している以上に見事に我々の作品のエッセンスを取り出して論評する先生の洞察力と話術にうならせられたものです。



下は記念に製作された「茅野市民館ケーキ」です。何度も模型を作った私だから分かりますが、ちゃんと五十分の一のスケールになっています。



受賞作の茅野市民館について説明するスペースがなくなってしまいました。しかしながら、こちらはこの場で説明するよりも他の情報をご覧頂いた方がいい写真でお楽しみ頂けるかと思います。ネット上での情報も充実しています。

http://www2.chinoshi.net/shiminkan/
http://www.geocities.co.jp/Hollywood/2964/2006/39tino/tino.htm
http://www.hall-in-one.com/news/news02_08.html

それにしても、古谷さんが活躍されると古谷研出身の我々の株も上がろうというもの。今後とも是非頑張って頂きたいと思います。勿論我々もいい仕事をして、古谷さんが設計者として優れているだけでなく、教育者としても成果を出されていることを証明するつもりで頑張ろうと思っています。

このたびは、おめでとうございました。

2007.10.03
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