2007.11.22
アトリエ・ワンの新作別荘の見学会に行って来ました。鶴山荘(Crane House)というそうです。



新作とはいえ、今春発売された図面集「図解 アトリエ・ワン」にパースが載っているので、ご存知の方も多いかと思います。先日ギャラリー間のブックショップで見ると売り上げ上位にランキングされていたので、よく売れているみたいですね。建築学科の学生なんかが矩計図を描くのの参考にするんでしょうか。自分がかつて描いた図面も載っているので、ちょっと恐ろしい気もしますが・・。

それはさておき、鶴山荘。

既にパースや模型写真が発表されているとはいえ実物の写真はまだ公にされておらず、12月発売の新建築が初出となるそうです。しかも今回の見学会はアトリエ・ワンスタッフおよびOB、東工大塚本研究室の学生などに限ったややプライベートな見学会だったため、事実上まだ発表前の段階にあります。

そういうわけなので、写真は手元にたくさんあるのですが、この場で建物の姿を直接取り上げるのは自粛しておこうと思います。やや残念ですが、仕方がないですね。建物から見た景色だけを載せておきます。日当たりのいい高台に位置しており、建物は全周が大面積のガラスに覆われているため、景色は抜群です。



写真なしで建物の批評をするのも難しいので、細かい部分の紹介はまたいずれ改めて。

一つだけ個人的に興味深いと思ったことを取り上げると、この建物では太さも位置もランダムな柱を林の一部であるかのようにバラリと邸内に配置しており、そのせいで構造と建物自体の存在感がかなり消えています。我々は設計をする上で、建物に綺麗なルールを持ち込んでキッチリと規則正しく収めることをついつい考えてしまいがちですが、その全く逆の方法が意外に有効だというのは新鮮な驚きでした。反対に、もしこの建物に均等に規則正しく柱が配置された場合、建物という人工的な檻に閉じ込められた感じが出てしまっていたかも知れません。

とは言っても、写真なしでは全く伝わらないのがもどかしい。面白い点は他にも幾つかあったので、いずれ発表された後にでも、もう一度この建物に対する自分なりの意見を書く機会を持ちたいと思っています。

2007.11.22
 2007.11.11
房総半島南端の白浜町へ行って来ました。



9/29のブログで書いたFさん邸(以下仮称F-House)の計画を進める過程で、何度かFさんのご実家のイメージが参照例として話題に挙がっていました。たまたま先日Fさんご一家が帰省される機会があり、見に来ないか?と誘って頂いたため、リサーチを兼ねて一日ご一緒させて頂きました。



「山本くんが好きそうなのがあるから」と、元同級生の奥さんに最初につれて行って頂いたのが池原義郎氏設計の「白浜中学校」です。1970年竣工というから、池原氏のキャリアの中でもかなり初期の作品ということになると思います。

池原氏というと早稲田大学の名誉教授で早稲田系建築家の長老、その作品は学生時代に図面模写の課題になっていたものです。当然、作品は幾つも見に行っているのですが、この建物については知りませんでした。



海に向かって開けた芝生の上には平屋の教室がクラスター状に集まっており、それらが特別教室を束ねた棟とブリッジ等で接続されています。各教室には放射平面状の小屋根がついたトップライトが平屋の上に乗っていて、日光が豊かに降り注ぐ・・ことになっているようですが、現在の目で見ると温熱環境的にちょっと問題がありそうですね。とはいうものの、学校建築が多様化した現在ならいざ知らず、この学校が竣工した当時としては群を抜いて野心的な実験精神ある学校だったことでしょう。残念ながら、事情により来年には取り壊されることになっているようです。



その後、Fさんのご実家へ案内して頂きました。ご実家は海を南に見下ろす高台の上にあり、空は高く日当たりよく、とても気持ちのいい場所です。

この辺りでは生け垣に槙の木を用いる習慣があるそうで、Fさんのご実家も手入れをされた低い槙の生け垣と、樹齢数百年に達するかと思われる巨大な槙の木に囲まれていました。現地では「細葉」と呼ばれているそうですね。千葉県の木でもあるそうです。



ご実家の裏山です。紅葉の気配すらない、照葉樹の森が盛り上がった山で、紀伊半島で見かける山の姿に似ている気がします。やはり黒潮に洗われて温暖なのでしょう。天気もよかったせいか、11月であるにも関わらず汗ばむほどの陽気でした。



ご実家は南に面して建てられており、家の前には庭との間に幅5mほどの広場が通路状に伸びており、その通路を挟むように別棟や車庫、物置などが建てられています。この通路が近所の方とのコミュニケーションに大事な役割を持っているだけでなく、家に付属する様々な機能をつなぐ動線の役割を果たしているようで、暖かい地域ならではの暮らしぶりだと言えます。かつてはお風呂も屋外にあったということですから、屋外と屋内の区別は相当小さかったようです。



実際、私が滞在した3時間ほどの間、ほとんどの時間を戸外や縁側ですごしていました。途中でまだ家に上がっていないことに気付かなければ、ついにそのまま靴を脱がずに帰ったかも知れません。



現段階では仮称F-Houseは中庭型を想定しているため、やはり屋外空間のあり方が非常に重要になって来ます。Fさんは中庭が単に採光やプライバシー保護のためだけではなく、近隣との接点であり動線であり屋外作業も出来る多用途空間となることを希望されているのですが、実際にそのような例を見ると、非常に得心が行きます。問題はそれを都市圏でいかにして実現するか、ということになるのでしょう。単純に綺麗な中庭に比べてむしろ難しい課題なのですが、なんとか解いてみたいと考えています。

2007.11.11
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